2 時 の メ ー ル ( 江 利 子 )






強で五秒に設定されたバイブレータが不意に振動する。机の木の表面をガリガリと滑る。削り取るように。最後に端から滑り落ちて、手を伸ばした先、後数センチのところをくぐりぬけていった。たった五秒の無言劇。


生温い炭酸はもう出すべき気泡を失っていて。やる気も無く開かれていたノートを閉じて私は携帯電話を拾いあげる。確認のボタンを押すともう一度、小さく震えた。



さて、どうしたものか。私は思考する。
この場合選択肢は当然中身を確認するか否かというもので、普通なら速やかにチェックするか、非常識な時間だと無視するかの選択となる。私は生憎どちらの常識も持ち合わせてはいない。だから、そうでは無くて、これは。



……単に相手の問題なのだ。この振動で呼ばれる可能性はふたつにひとつ。悪友で幼馴染か、或いは。



確認しても、しなくても。落胆する確率も二分の一。寝転がるときぶつかった数学の参考書をやや乱暴に押し退ける。よく分からない臨戦体勢になって、親指を繋ぎ目に乗せるといきなり弾かれた。爪の隙間に何か入れられたような、そんな五秒。



嫌われたかしら。

葛藤する私を笑うかのように、気紛れでかけたアラームが次いで鳴り響く。スヌーズを停止させようとこじあけた先にはメール送信者の名前がくっきりと明朝体で浮かんでいた。




嗚呼、もう。



携帯電話を未開封のメールごとベッドに放り投げる。二通分の重みが少しだけ手の平に余韻を残した。







































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