悟(蓉子)




優しさに紛れた嘘はとてもしみる。ヒリヒリとする傷口に塗りたくられる何か。のたくった跡が唯てらてらと光り。鈍い感覚が心を磨耗させていく。そんな心境になるのだ。


それが本能的な防衛なのだと人は言うのだろうか。傷つかないためのシェルター、生きるための鎧なのだと。


私、は。傷ついてもボロボロになってもいいから、貴方から貰ったものは全て受け取りたい。そう思うのだ。


他でもない貴方がくれたものならば、どんなものでも抱いていける。



傲慢、かもしれない。勿論私だって傷つかない方がいいに決まっているのだけど。



繊細な貴方は嘘をつかないとこの世では生きていけないと知ってしまっているから。





悲しい程。







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call you(聖)







「蓉子」




その名前を呼ぶのが好きだ。



確かなものなど何も無いのに、その瞬間だけは甘い錯覚が出来るから。いつもより三割くらい素直な声音で声をかける。振り返る蓉子はいつも困ったような笑顔で。


そしてそれが彼女なりの照れ隠しなのだと解っている私は、もう一度呼び掛けるのだ。




「蓉子」




暖かい空気に包まれて。








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Cry (聖)





「まだ泣いているの?」



ぽとぽととシーツに染みが出来ていく。

透明だったはずなのに、地に着いた途端変色していく滴。優しい温かさが煩わしくて私は首を振る。けれど少しずつ少しずつ染み入ってくる蓉子の言葉に抵抗することは何故だか出来なくて。代わりに深く深く枕に顔を埋めた。窒息してしまうかと思う程に。



こんなことを考えていられる内はまだ平気なのだ。



頭の中でそんな、どうでもいい思考が渦巻いている。ダブルベッドは時々途方も無いくらいに広く感じる、だとか。蓉子の殆んど溜め息となった吐息が耳元にかかる。髪を静かに撫でていく。



ねぇ、蓉子



呼び掛けは羽毛の柔らかさに吸収されて。


空調の音だけが、二人の間に僅かに横たわっていた。








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第一期聖蓉WEB拍手。そのうちこれらを核にひとつ作品が出来ていたりいなかったりするらしい。
別名妄想ストック。














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