小さなかくれんぼ(乃志)







「あ、こんなところにいた」


ひょいと顔を覗かせたのは愛しい妹。黒髪が微かに春風になびいている。さやさやという、聴こえるはずの無い音に顔を綻ばせた。


「志摩子さん」


狭い隙間に身を滑らせるようにして乃梨子が入ってくる。ざわり。頭上の樹が鼓動と呼応するかのように鳴った。

とくりと音を立てる自分の心臓までが愛しい。今一番会いたかった人が迎えに来てくれた。この状態を、出来る限り壊したくない。

そのまま動かない私に再びかけられる声。


「どうしたの?志摩子さん」


少しだけ曇っている乃梨子の表情。


「なんでもないわ」


そう、なんでもないの。

だから心配しないで、乃梨子。



貴方が見つけてくれて嬉しかったの、なんて。


口に出す必要もないくらい貴方はそれをいとも自然にやってのけてしまうから。


だから。


「ありがとう」


色々な気持ちを込めて感謝の言葉。少しでも私の思いが伝わればいい。


繋いだ手の平はいつもより僅か暖かくて、また少し、幸せになれた。




そんなある、午後の話。













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拍手・聖蓉以外。いつの間にか増えている。かもしれない。

















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