にがくわらう(聖蓉)




背の骨を撓め、身体全体を丸めて本に向かう聖は、綺麗である反面、未だに作り物めいて見えてどこか遠い。

その距離を埋められる日は来ないのだと、曖昧に理解した最近の感覚。
喩えるなら諦めという感情が一番近い疼きは冷たく甘く、子供騙しを笑う大人の滑稽を皮肉に笑う、誰の視点かわからない気配は達観した聖の表情に限りなく近い。

恋人になれば、全てが分かるなんて幼い思い込みは、随分昔に卒業したつもりだったけれど。

それに憧れを抱き続けるくらいには(聖曰く、)ロマンチストである自分を嘲られる錯覚も皆、形而上の飯事の盤上。







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愛情のあかし(聖蓉Ⅱ)




聖より後に眠ることは余り無いけれど。
大抵の場合、すこん、と眠りに落ちる聖はまさにどこかしらから落下している、という雰囲気(としか言い様がない)で意識を失うから、心配になる。
抱えた有機物を、この上なく愛しい、鼓動を繰り返す存在を、意識的に思考から追い出す試みが頓挫したせいで眠る彼女の重量に押し潰されそうな私は手を伸ばすか身を捻るかして今の時刻を確認することすらできないでいる。
せめて布団はかけて眠りたいのに。きゅうと抱きつかれたままの体勢も、万一の事故が無いよう解いて、できたら濡れタオルで身体を拭いて。聖の頬にこっそりキスをして。
思うだけでお腹の辺りがあたたまってくる、気恥ずかしさはばれないからゆるゆると長く尾を引き、ただ優しく私に降り積もる。







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はやブレ2作と抱き合わせでした。
いつかみた夢、いつかみる夢。










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