本音








「……ぃ……やぁっ！」


否定の言葉を叫んでしまった。



「………ふぅん」


聖の声。ワントーン下がって吐き出されたそれはその癖酷く明るい。
楽しんでいるのだ。そう、結論づける。


「ねぇ蓉子？私、最初になんて言った？」


唇を噛み締める。冗談抜きで限界に近いのだ。


はぁ……ぁ
ぱくぱくと口を動かしてみてもどうやらあえぎ声しか出そうにないのに。


「ねぇ？」


何がねぇ？よ分かっているんでしょう馬鹿私が限界なこともなにをして欲しいかもそれから今どんなことを考えているかまでお願いお願いだから早く楽にさせて苦しいのよ聖


「…っ………せ、、………」


だけど呼吸と共に吐き出すことが出来たのはたったのこれだけで。クスリと意味深に笑う聖の吐息にすら追い詰められて目尻からは涙が伝う。聖はそれを舐めてはくれるのに肝心なところには手を出さない。羞恥心とうずきがせめぎあいぐしゃぐしゃになり理性は押され始めて来ていた。


「……せ、ぃ……！」


名前を呼ぶ。それだけを頼りにして。只一つ、残された糸に必死にすがる自分。懇願して悲鳴をあげて、かすれて嬌声すら出せなくなるくらいになって初めて聖は抱き締めてくれる。


その優しさにまた涙が溢れて。わななく腕を必死でなだめて私は聖の肩にしがみつく。背中までは届かない。爪を立てると唇が胸に落とされた。やっと。緩く首を振ってやりすごすけれど焦らされ続けてきた体は過敏なまでに快楽を拾ってしまう。


「……や……いっ……ぁあっ……！！」

「可愛いよ、蓉子」



もう絶対に出せないと思っていたのにまた嬌声が漏れ出して。限界を押し広げて暴れ出す体を鎮められない自分。カタカタと全身が震え始める。



「はっ……あ………」


指が入れられる時の圧迫感。体を重ねる毎に少しずつ薄れてきてはいるけれど未だ少し感じてしまう痛み。せい、と呼ぶと応えるように髪が撫でられる。


「大丈夫だから……」


抱き寄せられ私は肩口に顔を埋める。鼻孔を擽る聖の匂い。それに安堵し、いっぱいに吸い込もうとする。

けれど息が続かない。切れ切れにしか感じられない香り。



「……ん…く……ぅっ…！」


聖が指を動かし始めるともう何も考えられなくなってしまって。


「……蓉子………」


地を這うようなアルト。背筋を快感と共にかけ上がっていく響き。


「…あ…っ……！…もぅっ……」



イキたい。



聖の指をきゅうっと締めつけて意識を飛ばす寸前に。



『拒絶しないで』



冗談とも本気ともつかない口調で呟いた聖の言葉が、

もう一度、

聞こえた気がした。





しないわよ、馬鹿。


心の中で呟いたのは貴方にも秘密。