愛は数えられるのだっけ(こっそり甘々祭)









拾い合う



もう寝ちゃうの?

……明日もはやいもの

ん、それは分かってるけど、さ

分かってるけど?

おしゃべり、しない?

ふふ、修学旅行みたいなこというのね

そ?

もっとも、あなたはすぐに寝ちゃったけど

……蓉子とクラス違ったはずじゃない

中等部の、よ

え、そんなのあったっけ?

普通ひとつの学校に一回はあるわねえ

いや、蓉子と一緒だったっけ、っていう。
そもそもどこ行ったっけー?

大部屋だったもの

あー…林間学校みたいな。
あったようななかったような

ま、そんなもんでしょうね

蓉子は覚えてんだよね、さすが蓉子

だって

学級委員だったから?

……聖の寝顔見たの初めてだったから

…………へ?

あ、その、そんなにしっかり見た訳じゃないのよ?

しっかりって

それに私もその後すぐ寝ちゃったし

ようこ

でも聖が会話に交ざるとは思ってなかったけどすんなり寝顔見せるのも予想外だったから驚いたっていうか

くくっ、慌てちゃって

だから……って、聖?

あはは、蓉子必死ー

……はあ?

いえいえ蓉子さんに慕われて誇らしいです

…誰が誰を慕うっていうのよ

幸せものだねえ、私

中等部の話じゃない

好きだったんでしょ?

………………

ね?

……ずるいわ

心外だなあ

ずるいわよ

でもさ、今の私は嬉しいよ?

え?

幼い蓉子ちゃんが私に見惚れててくれて

馬鹿!

えー、違うの?

ちっ……

違わない?

…もう

ね、蓉子

……なによ

明日、はやいんでしょ?

…ええ

じゃさ、今日は蓉子が私に寝顔見せてね

……いつも見てるくせに

朝は蓉子が見てるんだからおあいこ

そうかしら

そうなの。
とっておきの可愛い奴、よろしくね?

……そんなの知らないわよ

うん、私だけが知ってれば良いもの
よっ……と

きゃっ……

んー、あったかい
おやすみ、蓉子

……おやすみなさい、聖









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ハニィブロンド



やさしさを溶かしこんだ、色だと思った。


あまくくすぐる香りはカルメラに似ている。ぼんやりとたゆたう夢。吸いこむとしみていく、眠りへと誘うあたたかさ。指の先はちょうど良く熱をもらっている。マグカップのふちの、赤い線が段々とぼやけていく。クリーム色には、どこか丸いかなしさがある。


「落ちついた?」


落ちつくも何も、私は我を失ってなどいなかったのに。ただ、どうしてそうだったのか、知りたかっただけ。微熱はいつだって要らないことばかり考えさせようとする。例えばそれは幸せの定義。


__聖は、栞さんと会えて、幸せだった?


あの時の衝動をどう表現したらいいのだろう。聖の、ではなく自分の中から起こった渦。ぐるぐると、世界がまわって、聖はそのまんなかに立っていた。立ちつくしていたように見えたのは、視界がおぼつかなかった私の錯覚。あるいは、埋められ隠されていた願望。


ひとくち、口をつける。舌で転がすと、重心が少しもとに戻った気がした。こくり。喉を通るときの違和感のなさ。
耳朶に息を吐かれる。抱かれるときのような執拗な感じはなくて、あくまで、私をいたわるような。
……そう、手袋を忘れたまっかな手に吐きかける息に、似ているかもしれない。握られてほころぶ両の手の平には、じんわりと血が通っている。


「……なに、が?」


コマ送りの遅い残像は、まるで本物のようによく見えた。自分のことばを自分で追いかける。また、空気がゆらいだ気がして、後ろを向こうとしたけれど。両腕でしっかりと抱きしめられた身体は、聖をこすっただけでとまって。お腹の辺りがあたたかい。ぽかぽかとする。外からも中からも。










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眠る間



……ん

蓉子?

な、に……?

…珍しいね

いや?

んーん、いいよ、そのままで

だって、いつもは、

私が?

そう、せい、が

はは、じゃここまで落ちてくる?

おちる、て

ほらここに頭、乗せて。
寄りかかるより楽でしょ?

へ、き……

そー? 私は膝枕のが気持ち良いけど

このほうが、いいの
聖のね、

え?

に、おい、が

……………

……………

……蓉子、キスしてもいい?

…………

………ようこー?

………ん、ぅ……

……起きたら覚悟しといてね、蓉子
あーもう、この熱、どうしてくれんのよ……











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愛しさに負けた



「おはよう、聖」

「……はよー」

いかにも「まだ眠いです」という雰囲気を纏わせて、聖は思いきり欠伸をしている。珍しく後5分も出ずにもぞもぞと起きようとする、だから助けようと布団をはがすと小さく呻き声。もうそんなに寒くはない気がするのだけれど、聖は結構な薄着で寝るからだろうか。下手するとシャツもはおってないことがある。そんな状態で抱きついてきて、抵抗されたからって拗ねる方がどうかしていると思う。寒いのが苦手だから厚着しているのだ。せめて布団の中であったまってからにして欲しい。
昨夜の所業を思い返して溜め息をつくと、聖が見せるのはやっぱり拗ねたような顔。ちゃんと起きたじゃんかー、膨らんだ頬をつつこうと伸ばした手は捕まっていきなり甲に落とされる口づけ。してやったり、な表情が悔しいからそのまま顎をくすぐってあげた。目を細める様は猫そのものだ。つい、と抜き去って拭うように腰にその手を当てる。

「起きなさい」

「はーい」

目玉焼き冷めちゃうわよ、と残してひと足早くリビングへ。拭える訳がない右手に視線を送って、思わず頬が緩む。
洗い物は食べてからでいっか、と箸を並べた。確信犯が起きてくるまで、あともう少し。











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地上163cm



私だけがキス出来る場所……ってね

はあ?

蓉子の唇ー

当たり前じゃない

そう? 嬉しい
あ、でも、

ん……?

ココ以外も……だよ?

はっ、……れも、

それも?

た、りまぇ……っあ

ふふ、いつまでその高さでいられるかなー

もう、何言ってる……の、よ、











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御題より各タイトル頂きました。
会話文練習中です。


















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