祐巳←祥子×蓉子(レイニーバッドエンド)



「……お姉さま」


そう呼ばれたかったのは、本当は私。
きつく睨み咎めてくる、私に説教を説き聞かせようとするお姉さまを、私は笑った。もうそんなもので言いくるめられる私では無いのだと、一番に大切なものを得られなかった私に失うものはもう何もないのだと、くすくすと、我ながら可笑しくて笑みが零れる。ぎょっとしたお姉さまが、ほんの少し後ずさるのを目におさめ、更に笑いが湧いてくる。


ああお姉さまだってひとりの人間ですものね、完璧で正しい少女なんて、私のために作っていらっしゃった人格に過ぎないのですものね。


いっそ本当に完璧なら良かったのに。そうすれば堕とす楽しみが増えましたのに。
祐巳、だけどあなたは完璧な天使だったわ。


ダンスのステップを踏むように近づいて、白く晒された首筋をがり、と噛む。鮮血が、紅い薔薇の色が、美しい肌をしたたっていく。悲鳴を堪えたお姉さまが綺麗で私は引き寄せられ唇を重ねる。やり方など分からない。だけど初めにこうすることくらいは知っていた。


嫌がり逃げる舌を捉え、どうすれば良いか分からず、取り敢えず軽く絡めとる。ぬる、とした感触が、お姉さまの荒い息が、心地よい気がして、私は少しうっとりとする。


「……お姉さま」


あなたをこうして縛りつけた私には、もうそう呼ぶ資格すら、無いのかもしれませんが。











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祥子×祐巳



おねえさま?


わたしの声が、恥ずかしいくらい甘い。


……


……せめて、なあに、とかくらい、返してくれてもいいじゃないですか。
わたしに乗っかっているお姉さまはびっくりするほど無邪気で甘えんぼう。


…さちこ、さま、


ベッドの上では名前で呼ばれたいって、わがままばかりのお姉さまは、蕩けた目を更に細くして笑う。


なあに?


ずうっと吸いつかれた胸が、熱くてじんじんとする。舐められ転がされ、じゃれつかれ甘えられ。


……


胸がいっぱいになって、返事がかえせなかった。
わたしもお姉さまのすべすべの肌にもっとさわりたくて。そうっと手をのばす。お姉さまはちょっと拗ねたような顔をして。


……あっ


悪戯っ子の瞳、緩む頬、またひとつ増えた紅いはなびら。大輪じゃない分、たくさん、たくさん、降らされる、お姉さまの愛。


ゆみ


ぎゅっと抱きしめたら、またひとつ。四季咲きの紅薔薇、なんどもなんども咲いて散らされて。


ん……っ


甘い汁を喉を鳴らしてのみこむと、お姉さまは、大輪の笑顔を浮かべた。
やっぱり無邪気で甘えんぼう。胸が高鳴る。


……もういっかい


緩んだ頬に、紅い唇と熱い息が落とされて。
お姉さまとふたりの音になった口づけは、砂糖菓子でできた薔薇の花みたいに優しく甘くとろけていった。









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祐巳×蓉子



「蓉子さまって、かわいいですよね」

「…そう?」


恥ずかしがりやですぐに赤くなる祐巳ちゃんは、けれどこんなことをたまにぽんと言う。


「かわいいですよ、絶対!」

「祐巳ちゃんには負けるわよ」

「そんなことないです!」


嬉しいけど恥ずかしいことを言う口に、手を伸ばしたら途中で止められた。両手で握られる、まるで言い聞かせられてるみたい。
らしくないな、なんて頭の片隅で囁く自分は少し嫌い。舞い上がる自分はただ赤面して固まっている。


「…どうしたの?」

「えっ?」

「何か、必死だから」

「……だって、蓉子さま、」


……私?
今までだって私のことが話題だったのに、今更驚いたような反応を見せる私の身体を、祐巳ちゃんはじいっと見て綻ぶように笑う。


「いつも外だとびしっとしてらして、すごく格好良くて、」


蕩けた笑み、すぐ目の前で、私は目を離せなくて。
彼女に賞賛されるのはなぜかとてもくすぐったい。ざわざわと全身がざわめく。


「だけど今こうしてくださってるのが、なんだか信じられなくて」

「こうして?」

「あ、う……」

「ふふ」


取り合うつもりはないけれど、ようやく戻ってきたイニシアチブ。手の上で転がしながら、気持ちの上では優しい茶色の頭を撫でる。


「…しあわせ、なんです」

「そう、嬉しいわ」


まるごと愛されてしまった喜び。何にも変えられない、もう後戻りできない。
望むところよ、なんて、つい言ってしまいそうなくらいに、私は祐巳ちゃんに甘えている。


「もー、これ以上あおらないでくださいよー」

「……え?」


ぷう、と膨れた祐巳ちゃんは嬉しそうに眉尻を下げて私に近づく。
肌色が視界を横切るどころか盛り上がって広がって埋め尽くして。


「蓉子さまっ」

「は、え、……んっ」


でも待って、それはちょっと待ってちょうだい。


「かわいいです」

「…ちょっと、祐巳ちゃん、」

「や、です」


私より体温が高い手でぎゅうと押しつけられる。何が、とか、把握する前に身体に一本刺激の筋が走る。
目を輝かせた祐巳ちゃんは、私の上で、花の綻びの笑顔を見せる。嬉しくて恥ずかしくって陥落するしかない、無邪気な笑みを。









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ぐるっと一回り、のはずが蓉子の総受っぷりには勝てなかったミニ紅薔薇祭跡地。
祥蓉とか続き書きたいなあ。










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