白虫夢




癖って、

なんのことだったの?
日向に包まれながら交わすたわ言は、下手をしたら屋内の逢瀬より甘いのではないか。
思考が灼けているからか。汗と熱を吸収し尽くす制服が私を縛っているはずだというのに、事実背に垂れるそれがにおわないか、私にだって人並みには備わっている心配を肋骨間近に隠しながら、蓉子に尋ねるその響きがひどく崩濡れたものになってしまった見込み違いに密かに慌てたせいでまたたらりと、一筋滴った感触を得る。首を振って追い払ったのは形而上の蓉子で、戯けた妄想で赤黒い情欲で青白い頑是無さで求め貪る蓉子の肌はきめ細かで吸い付き、離してはくれない。届かない。愛の不在を笑い飛ばせた頃の無情が、今の無様の遠因になっていると知らないわけではなく、けれど現実の時間は不可逆であり私たちはただの女子高生で、互いに好意を抱いていると気づきながら決定的な一言を繰り出せない程度には理性と臆病を肥大化させた少女であるからして、責任の半分を蓉子に押し付けたがる私の怯懦も不当の謗りを受けたからといって易々と棄却されてしまうには余りに日頃の関係が。昨今の錯覚と思い上がりを俎上に乗せて鈍らの鎌で刻みつけた盲目の虹彩が、映すのは虚構のみだと言い切れない切れ切れの特別扱いを千切り捏ねてはひと時の悦に至りながら。すぐにその次を渇望しては彼女への我が儘の種にする私を咎めないから。
つまり蓉子は優しくて、だから嫌いで、無邪気で可愛くて愛おしくて、好きと言えない。

……ひみつ

夏日の鮮烈さが呼ぶ目眩が蓉子を先に参らせてくれることを願う私の精一杯の可愛げが、汗も思考も溶かし不彩にかぐろく蟠る欲だけを残す。











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タイトルは御題「変換ミス」より。












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