あなたがいなくても生きていける(志摩子と令)




何か、要る?

……いえ


そっか、と呟く令さまの目は真っ赤だった。
妹であり、娘であり。一番近くで見送って、泣いて。悲しんで。泣いて。
それを許されていることを羨めても僻むことはできないぐらいに、私は脆い。
皆の前で憚らず泣くことすらできないくらいに、私は。

私とあの方との間に、一体何があったというのだろう。
私はあの方の何を知っていたというのだろう。
あの方は私に、何を見てくれていたのだろう。

全てをわかっていたとしても驚かないし、全く知らなかったとしても納得できた。
もちろんそのどちらも有り得ないことを、私は理解していたけれど。

白い煙がのぼってゆく。棚引く程の風は無く、よく晴れた、晴れすぎた空。
泣きたい思いを、湿っぽい空気のせいにすることすら許してくれないのはあの方らしくて。
それにふと笑うことができるくらいには、私はあの方からしたたかさを学んでいた。
何もかもを知ったことかと言いながら、何もかもを知っていた、手を回していたのを知っているのは、もう私だけになってしまった。

もしもあの世というものが有るのなら。
お姉さまと蓉子さまの元にあの方がたどり着ければ良いのだけれど。

いつかそう遠くない未来、私が行くまで、待っていてくだされば良いのだけれど。

ふふ、と笑う。笑ってみせる。
つっと伝った涙が晴天に照り返され、眩さが目に染みた。









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俺屍版設定、お借りしました。
2013年のざるそばさま生誕祝でした。炎雪とお揃い、いいじゃないですか!(笑)
なんて呟きを残しつつ。ファンサイトはきっといつか(笑)。










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