カウント、ゼロ







「おつかれさま」

「オゥ。
 笑いに来たんかよ」

「まさか」


扉を開けて、驚いちまったのがコイツに対して、てのはあんましただしかない。
アタシの方から会いに行こうっつう出鼻をクジかれたせいだからだ。


「で、どしたよ?」

「あはは、」


30分ぶり?
微笑む祈はさっきまでと同じカッコ。つまり、制服。
黒服なのに立ち会いかよ、とボヤいてた神門には同情したが、その前に星河とどっちがやんのか揉めてたサマがひでぇもんだったからその同意はカタチにする前にあっさり霧消した。
アホ丸出しで、まー仲がイイのはケッコウだけどよ。アタシがいない時にやれ。
祈の宥め方に場の収め方は、ビミョーに不満だったが。まぁ、他人を盾にするやり口はこいつらしくて、最近はその小狡ささえ……いや、やめとこう。ヤブヘビだ。


「これでも色々、悩んだんだけど」


悩んでる時点で答えは出てるのよね。
ヒトゴトのような述懐も、やっぱしこいつの弱っちい保身のひとつ。


「どう行動しても、何もしなくても、同じだけ後悔しそうだから。」


だが。こーやって、少しずつ素直のカタチは変わってるかんな。
帰ってきたのはコイツの意思。変わってくのもコイツの意思。
それにアタシが多少なりとも貢献してんのはコーエイの至り、なんて、な。


「自分が一番気持ち良いのにしようって」

「……で?」

「Dランクにようこそ」

「ッハ」


変わるトコ変わんねぇトコ。
好きだ、と思い知らされんのは大概がこーゆー時。


「アンタらしすぎて、逆に笑えねえわ」

「笑ってるじゃない。
 もぉ」


口調は故意まみれだが笑顔は自然だ。
そーやって笑っててくれんなら、シドのケツ蹴飛ばした甲斐があった、ってもんだ。


「その耳、似合ってるわよ」

「そーかい」


サスガに感謝は言ってやんねぇが。口角の上げ方で伝わんだろ。
すっきりしたかったから、アタシのためにやった。そん中にアンタのコトもちっとは入ってる。
そんくらいなのは承知してるだろ、つのはウラを返せばそんくらい入ってンのはバレてる、つーコトで。
余分に立った耳指して笑う祈の、屈託が削れてくのを間近で見てんのは引き換えのトッケン。


「罰ゲーム?」

「おーよ」

「何時まで?」

「次の星獲り」

「恥ずかしく無いの?」

「なんで」


ンな、残念そうな顔されてもな。
そんでケッキョク、不満なんか満足なんか。どっちかにしてくんね?


「……可愛いのよ?」


ヘンな顔で焦ってるアンタのが、よっぽどだっつのは、
ま、勘弁してやんよ。

(ところでアタシとアンタって確か今日ソトで飯食う予定だったよな。どーするよ?)




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頂点の軽重、肩書きの相違、全部吹っ飛ばす愛からまずは、年相応に。











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