自意識過剰でいよう






いやがっていたのはポーズではなく。
かといって本当にイヤなわけでもなかった。
……ただ。
この、青く乱暴な感覚を。
受け流す術を他に、知らなかっただけなのだ。






…そめやはさぁ、

……っ、

いつも、やだっていうよね。


……ここで。
ご丁寧に、そう付け加えたのは私の背中から5mm強の上。
ぎりぎりで触れない、それなのに荒い呼吸以外の故意すらくれない。


……だ、…ったら、

んー? 

……ぁ、…


ほんのすこし。手を突っ張るか、背を反らすかすれば届く順は、
そんなことをしなくても、いやになるくらい、私にからみついている。


…うん。

っ!!

いーよ、


歯を食い縛る準備すらできた接触は、愚かなほどやさしい。
ついさっき、不穏なことばを吐いたくせ、自分ですらいやになってもまだ与えられ続ける愛撫は、私の好きなところを、――タイミングばかりが完璧に、


は、…ぁ!

染谷、…そめや、


喉の奥から吐き出された喘ぎ声の欠片に、ついに屈服した私を、どうこうしようなどという意図を全く持たないまま、頬の端、うなじのすきま、ぺたり張り付いた髪の生え際なんかに、この人は、たくさん、キスを降らせる。
ひどくあまくなってしまった、媚びさえがほんのり、混じってしまったさっきのそれ、に、私が持っていた葛藤など、全然わかんないという所作で。


ん、ふっ、…ぁ…、や、……ん、ん、


ぜんぶしってる、なんて嘘。でも、なにもしらない、のも、うそでしょう?
至極やわらかに、私の腿のつけねを、くすぐるように撫で付ける仕草。
ああ、これは、こんなにも心地良いものだったのか。
自分の快楽を受け入れると、かなしいくらい正直に身体が震えた。


そめやぁ、……いい?

…あ、……ぅ。…っん、


今さっき知ったばかりだというのに、もうずっと昔からわかっていたかのような錯覚。
やわらかで重い罠。こんな単純なことで、とびきり幸福であるからこそ――怖い。
だって、これで。
私はもう、この人から絶対に逃れられない。







……なんて思ってたことも、あったわねー……

…え、ちょっと、…ゆかり、

なによ、不満なの?

あたしのテクが良かったってこと!?
なら素直にうれしーけど!?

大丈夫よ、そんなことないから

ぐっは

耳元で叫ばないで。煩いわ。

ヒトの顔面、ホールドしてんのはゆかりじゃんか!!

いやなの?

だって、……なまごろしじゃん、これ、

キス、されたくないの?

したいです……

「されたく」、ないの?

…されたいです。

よろしい。


あれだけ怯えていた原因も、解決策も、気づいてみればなんのことはない。
逃れられないなら、こちらも。
逃さなければいいのだ。




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久我誕2014。HAPPY BIRTHDAY!











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