僕が君を好きな理由




綾那のどこが良かったの?

……はい?


ああ、誤解しないで。
今の愛情を、疑ってる訳じゃないの。


さらりと爆弾発言を放り投げ、平然とこちらを見つめているかわいい恋人。
かわいいけど、いつもどおりかわいいまんまだけど、だから背筋が硬直する。
嫉妬の気配は見えないし、事実してないだろうけれど。
怖い、よりは途方にくれて、でもやっぱり怖い。たぶんヒエラルキー的な意味で。姫共々、絶対逆らえない!のは、普段ならそれ込みで幸せだけど。
中途半端に逃げても仕様がない(どうせきっちり答えるまで解放しちゃくれない)から、真面目さをかき集めるために、首を傾げる。うーん。
……うーん。


……わかんないや

…順、

だってあたし、染谷が好きな理由もよくわかんないもん。

……あなたねぇ。

染谷が染谷ってだけで、好きなんだもん。

……呆れた。


じゃあ、染谷はなんであたしが好きなのさー?
口にのせる前にバレて、阻止がかかったから渋々その強引な手段に応じる。
抹茶味とバニラ味が混ざるの、悪くはないけど、甘ったるすぎてくらくらした。胸焼けしそう。
アイス効果でひんやりした口内をまさぐるのはちょっとだけ面白かったけど。






別に深い意味なんか全く無くて。
そういえば、という興味。
そういえば、あの人の良いところって何なのかしら、とか。
中途半端な誤魔化しなら潰してあげたけど、本気で言いたくないなら追求するつもりも無かった、それくらいの余談。


んー、
例えばさ、今綾那に告白されたら、
何で一年前に言わなかった!こうならなかった!って叫んで、すっごい喜んで、
そんで「ごめん、今は染谷の方が好き」って言う

ちゃっかり喜ぶのね

んあ?
……はは、まーね


たぶん、とても都合よく解釈するなら、この人は好意を向けられることにとても貪欲で。
そのくせそれが分かりにくい、私や綾那なんかのものを求めてしまうのだから。趣味が悪くて、可哀想で、とても愛しい。


疑ってるわけじゃないのよ?

……2回言われると急速に不安になって来るんですが


情けなく眉を下げた顔までが、さっきまでのじゃれつくようなキスで伝った唾液をバカ丁寧に掬い取っては舐め取ろうとする貪欲さと不釣り合いで、だからこそ順らしくて、愛しくてたまらない。
……本当、好きな理由なんて、あなただから、で充分だわ。








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タイトルはふたりへのお題ったーからお借りしました。











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