とうさくのとうりつ




……は、

…しゅうちゃ、…ん、……ふ、

おい……いのり、


……ふたりきり、なのに。
気分も体勢も。もう、半分くらいは情事の範疇なのに。名前呼びになってくれないのはとても不服。
(「そういう」のっぽいと思わなくもないけれど、そうでないことはお互いわかってるから。
 観念に近い表情で、私の名前を口にする柊ちゃんが好きだから、いいの。)
だから抗議だけを目的にして、薄いナイロンごと、目の前の肌に噛みついてあげる。


……っ!


伝線して破れちゃってるんだから、どうせこのあと、ゴミ箱行きでしょう?
元々それを受けての戯れだったのだし。ああどうせなら、もっと色々、楽しむために頭を働かせるべきかしら。
思いはしながら頬を寄せ、吸い上げては撫でる、舐める、無心がただ心地良い。
やわらかな弾力、を通り越して引き締まった腿。破れた(破った)黒は扇情的で、ちらりと覗く素肌に散らばる鬱血は、ばらまかれているというには足りない。
まだ先に進む気は無いし、柊ちゃんだって多分このまま最後まで許すつもりもないだろう。
もう少し地肌の割合を増やそうと歯を立てたところで、ただ一度、ぞろりと撫でられた首筋から。痺れるような快感が伝った。


……ふぁ、

…テメェ……


――なんて声出してんだよ。
ためいきながらにかけられる柊ちゃんの声こそ、すっかり欲に濡れていて。遠いのに、なめるように、まとわる低音。
拘束には成り得ない縛られ方をした両の手が、彼女を欲しがって暴れようとする。
なだめる理性が幅広のリボンを引きちぎる真似を押しとどめる、その代わりに息を荒げて、噛みつけなかった歯の隙間から、呆気なくこぼれて。


…なまえ、


呼んで。
こうやってねだりたくなんて無かったのに。いやだったからあまい、のがれがたい誘惑に耐えかねて、けれど柊ちゃんの目は見つめられずに。


……わりィ。……さえ、


宥めるように挟まれる、そのままくいと上向かせられる。
お互いに戯れだとわかってるからゆるしあえる、反省も謝罪も要らないから目を逸らしたかった、のに。
伝わってしまって、目蓋にあてられた手はひんやりしていて。
それに傷ついた自分の脳は、一拍経ってからその温度の理由に気がついて。
身をかがめた柊ちゃんが落としたキスが、優し過ぎたせいにして不満の吐息を漏らし、その先をねだった。








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れったいお題ったーがネタ元……のはずが全くの別物に。(よくあること。)











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