ばかみたいに欲張りになってた




このまま終わろうか、先に進もうか迷いながら、何度もキスをする。
ひとつひとつが長くなるのは、せっかく離して離れた輪をすぐまた閉じてしまうのは。
好きだから、愛しいからだけでは無いということは、薄々感づかれている、気はするけれど。
ただ応えてくれる、同じ強度で返してくれる。その理由には薄々感づいているけれど、私は知らないふりをする。


は、……っぁ、


戯れのように肩から腕へと滑らせた指先ひとつ、ふるりと震えたのは、ただの反射。
(かわいい、反応。)
やさしくささやけばささやくほど蕩けてゆく、時折つめたくするとびくり、震える。
(いじわる、とつぶやかれる、訴えられるときの、敬いが解けた甘い睨み。)
たいていは無意識で、だからゆかりのその反応ではじめてきづく、すこしだけ反省する。
(すこしだけ、なのは、そう、されたゆかりがますますやわらかくなっていくから。)
ぐずりと溶ける、熱ばかりがわだかまる、ちいさな囲いの中のせかい。
(今日はもう布団の上。だけれどまだすわってる、向かい合ってる。)
崩れるようにもたれかかってくる重さが愛しいから、手を脇に挟み入れ、そっと押しやる。
(だってこの体勢じゃキスできないし、その先にも、進めないでしょう?)


はい、手、あげて、


ベッドヘッドについたゆかりの背が、向こう側まで落ちてしまいそうだったから掴んだ手は、口とは裏腹に彼女の動きを阻む。
かわいい苦情を吐き出そうと、うっすら開いたままの唇が動こうとするところで塞ぐのは、どこまでも勝手な私だけの事情。
それを受け止めながら、嬉しそうな笑顔を浮かべるゆかりを見てしまうのが怖いから目を瞑る。
けれど見なくてもわかる、伝わってくる表情に、ずきんと痛む心。疼く、胸。
抱き返されるのではなく、まっすぐに伸ばされたから、はやくその手を取ってゆかりに先をあげなくてはならない、のに。
進むのも、止まるのも勿体無いとよくばって、結局かたまる私に今度はすこし、呆れた気配。


……ゆかり、

…はい、


目を閉じたままで微かに笑う。キスを重ね、よくばる合間に見てしまったから、観念して彼女のシャツに指を絡める。
しっとりした感触を心地よく感じながら、そうっと首をくぐらせて。キャミソールに移る前に後ろに手を回し、頼りない背凭れから引き離すついでにホックを外してしまう。
おどろいた表情はすぐに消え、もう、と今度は実際に口に出される、小さな苦情。


……ちゃんと、してください

…もちろん。


露出した鎖骨に唇をつけ、吸い上げてから。
かすかについた赤い跡をなぞりながら、ふたり分ののぞみを叶えるために、最後の一枚に手をかけた。









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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。










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