閉じたのはダイヤモンドの瞳





あとで後悔するのは、わかっているのに。
苦しむ顔が、見たいわけじゃないのに。


せ、んぱい。
……も、


欲しがって震える手を、今までさんざん握り締めては、欲望を押し潰した、少女の意地を崩すために仕掛けた、ひどい手管の数々。顕に、無残に散らばっている赤と黒。
欲しい、と言わせたいから与えない。泣いて、鳴いて欲しいから逸らして焦らし、反らさせる。


なにが、欲しいの?

っ…


愛してる、なんて言わなくていいの。
ただ、私を求めて欲しい。


あ、の……

うん、


理由なんて要らない。気持ち良くなりたい、それだけで良い。
ゆかりのことだから、そんな口実は、言い訳になるどころか苦痛の種にしかならないのだろうけれど。
それすらも快楽の素にしてしまう、せざるを得ないくらいには追い詰めて。
退路も武器も全て断って、愛を求めるなんて、ほら。お門違いでしょう?


……先輩が欲しいです

それじゃわからないわ

…先輩が望むかたちが、いいです

なら、このままね


意図的に、少し。冷たい声を出すだけで。
びくりと震えて、そして一瞬だけ浮かぶ悔しげな表情、あっという間に諦めになって、細い息は堪えられる代わりにことばを紡ぐ。
すぐに悲鳴になる掠れ声は、もう噛むことすら負担になる唇の傷の隙間からこぼれ落ちて。
あまいおねだり。すがる、こんがん。ひどいはなし。


…あ……や、

欲しい、のでしょう?

……はい。


目の前に来た隘路の入口に、歯を立てる。
やや乱暴に担ぎ上げれば予想通りの拒絶、抵抗は理性と一緒に少しずつ剥がれて行く。
剥がして、行く。


っん! …んっ!!

唇、噛まないの

は、…っい! …ぁ、…っぁ……


後悔はあとにしか立たないから。
苦しむ顔の先にしか、蕩けたゆかりは、見られないから。
快楽と共に背を伝う、冷たい汗の存在も行方も、ゆかりは知らないままだから。
いかせて欲しいと囁かれ、最後を請われた。陥落、させた。
ゆるされなくていいからゆるす存在でありたいと、身勝手なことを今日も思う。






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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。










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