「またね」 (綾紗枝)






あの子と幸せになりたかった。
だけど、このままじゃ駄目になるのも、わかっていた。



――私のしあわせを、あなたが決めないでくださいよ

あら、しあわせにしてあげられなかった?

ちがいます!!

……なら、良かった

…っ
……そういうの、あなたには、似合いません。

そう。
…良かった。

だから!

嬉しいわ。ありがと、

…だから!

ごめんね

……!


がむしゃらになって私を追いかけてくる、追いつこうとする、飛びつこうとさえする、あの飢えた瞳が好きだった。
息荒くがっついてはノンストップで、自分勝手な満足を浮かべたあとで不安そうな顔をする、中学生男子みたいなセックスも好きだった。
(中学生男子としたことはない。念のため。)


私、無道さんのこと、失いたくないの

…私もです

わぁ、無道さんってナルシスト?

ちっ、が、います!
…祈さんと、別れたくありません。

うん、そうね。
だから、別れましょう

…どうして、そうなるのか。
結局、教えては、くれないんですね

うん、教えてあげない。
だから、
わかるようになったら、会いに来てね

……はい?

不合格のままで来たら、殺しちゃうから

…いっ!?
……それ、完結しちゃうじゃないですか

そう。そして私は自首して一躍、時の人に。
最高に陳腐な愛憎劇に仕立て上げてあげる。

……勘弁してください

ふふ、じゃあ、頑張ってね


一生懸命で、一杯一杯で、器用な優しさになんて遭遇したこともなくて、
それでも胸は簡単に一杯になる、逢瀬はいつもあっという間で、名残惜しそうな無道さんの表情ばかりが浮かぶ。


――好きです。

そう。私も。


それだけで世界が成立した頃の話。
それだけで生きていくには、私は少しだけ、欲が強すぎた。

だから、さようなら。
もしまた会えたら、そしてそれが幸せな再会であったら。
あの子が、本当に。正答を携えて、会いに来てくれたら。
とても素敵だな、と、今日も思う。




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タイトルはreplaさまよりお借りしました。










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