23年と20年、12年(順ゆかでパロディ。子育てネタ)







髪に触れ頬に触れ、こめかみを撫ぜては襟足を指で挟み込んで弄ぶ、
この流れで唇を使ってこないのは、ただ私をみていたいとき、間近で見続けていたいとき、らしい。
つまり視姦がしたいのだと、蕩けた目で、声で言われてしまっては、
それが本気なのだと知っているから、どうしようもないで済ましてしまう、少しだけ、期待もしてしまう。
思うさま私を見つめて、そのあまい瞳で嬲ってから、最後にいちど、唇を奪われるとき。
その口づけは、なぜだかいつもより、少しだけ。
後で思い返すと、自分でも笑ってしまうくらい――厳かであるようで。
時折垣間見えるあなたの、真面目な姿が好き。


なーにかんがえてるの、

…あの子のことだけど。

……どしたん?


だから、こうして。
いつも、ただ順がしたいようにさせるのを楽しんでいたのに、ああ今日は首筋にやたら視線がくるわね、胸元、開けて欲しいの? なんてこっちも蕩けかけていたというのに。
間近で見る瞳が、さっきとは全く違う意味で真剣すぎてくらくらする。嬉しいけれど、流石についため息をつきたくなる、と言ってあげてもいい。
貴女が大概親バカなのは知ってるけれど。そんなに真剣になるべき事件が毎日起こってるわけじゃないのよ。


ああ、ごめんなさい。
たいしたことじゃないの


だからこのあとにでも、と告げようとした唇は、いつものように静粛なキスをされるのではなく、促すように指先が、触れることもなくぱっと差し出され、そして消えていった。


なに?

…そろそろ、


これのことを、考えなきゃいけないのかしら。
なんて、あなたの熱視線でうっかり考えてしまった、それをこんな風に素直にばらしてしまったことで。
肌との隙間に滑らせて、ブラの紐を持ち上げた指先が、さっきまでの空気のまま、まじまじと見つめられてしまったのがすごく、居心地が悪くて。
一拍、二拍。固まりあったあとで順がふはっと吹き出したことに救われて、不格好なキスを強請る。
笑ったその裏で、彼女が、あの子の成長を喜ぶと同時に寂しがるなんて器用なことをしてくれたものだから。
不意を討つのはいつもよりずっと簡単で、口の中の主導権も私が持ったまま、甘噛みしてから吸い上げれば、ひくり、逃げようとするのはこの人の懲りない、改めてはくれない臆病。
最近ではもう、そんなところ込みで愛することを、覚えてしまった。


…さびしいなあ

ばかね。

ゆかりがついてくの?

さあ?
しっかりしてるから、ひとりで行きたがるかも


もしかしたら、もう、購入済みだったりして。
口にしたら落ち込みそうだからその代わりに、今度は私がかき回す、順の髪、気ままに触れては楽しむ、首から上の肌。
キスはしないまま、なのは、さっきのあなたへの意趣返し。私の方が先に口寂しくなってしまって、誤魔化すように自分の唇を舐めたら、ごくりと順の喉が鳴った。


あなたから振れば?

うーん……考えとく。


だから、その話はあとにする。
さっき私が同じ提案をしたときは、あんなにあっさりと却下したくせに。
あんなに真剣な瞳で、私に、娘のことを心配してみせた順は、もうとっくに人の親で。
それなのに変わらない、変わらなかった私への愛情が、そうと呼ぶにはもう流石に恥ずかしい気もする情熱が、いまだに私の上を舞っては中まで忍び込んで、今日もまたいつもの夜がひとつ、過ぎる。








--------------------------------------------------------------------------------------

(出会って)23年、(付き合って)20年、(子供が出来て)12年。
半三次創作の小品でした。












inserted by FC2 system