……おいで


こんなにやわらかな笑顔で微笑まれて、
拒絶できるひとなんているんだろうか。





すきなひと





……どしたの、

順。


もそもそ、移動するさなかに。
嬉しくて、舞い上がりっぱなしで、だけどそれよりもっと先に困惑がやってくる、
あたしたちの関係ってヤツは、見様次第で捩れていそーだったりそのくせ単純だったりするんだけど、結局のところ。しょーもなさは大概のところこーゆートコで露呈するもんで。
ぱしり。呼ばれたあたしの名前も、いつもより、しっかり、芯が通ってるみたい。
(いつもだってすんごい決まってるけど! やわらかいとこも、好きだから!)
(すーきーだーかーらー! って、世界中に叫んで回りたい。そんで、この子と、あの人に、呆れられたい。)


……えと、じゃあ。

ん。


ぽすり、埋まる肌の薄さに感動する。
やわかい!ってほどじゃないけど、あったかい!ってこともないけど、だって姫の腿ですよ、膝枕ですよ、あたしがされてんですよ!!
調子乗ってぐりぐり、頭を押し付けてみたらはたかれた。ごめんなさい。


……どしたの?


上目遣いにもう一度、(だって自然になっちゃうんだもん。)(いいねえ、この響き! 自然に、とか!!)純粋に疑問だけを乗っけてたずねてみる。
ぱちぱち、またたいて、それからふいっと。離そうとした視線は一瞬だった。
すぐに落ち直してくるおっきな瞳は、いつもと同じくらい魅力的で、そんで、いつもよりほんのちょっと、
……だめ、これ以上は、あたしの口からは言えない!!


……練習。

…………あー、
……ですよねー


ああ、こんな笑顔ではにかまれて、反対できるひとなんているんだろうか!


順だってゆかりとするでしょう?

……あー、…うん、
でも夕歩に耳かきしたときのがまだ多い


素直に答えてしまうのは、だって、姫の感触が気持ちよすぎるからです。
ごめんなさい半分はごまかしました。でも半分は真実です。だってなんだか甘い匂いまでがふんわり漂う(気がする)この感触! あの人には! 勿体無い!!


順がしてるの?

……内緒

…そっか。


あー、しあわせだなぁ……
嘘はないのに、染谷の、こーゆーときの顔、すまし顔つくろうとして失敗したり、あるいは照れて色も熱も蓄えた頬を押し付けてくるときとかの、表情が脳裏にちらついて、そっちに幸せのパーセンテージ、持ってかれちゃうんだから、もう、どーしようもない。
(ちなみに前者がしてる方で後者がされてる方。あっつくなった顔を、えろい意味無しで押し付けられるとか、もー、ホント、興奮する。)
(……あ、やば、)


満足?

……うん。


至福の空間からころり、抜け出して。
さあ、今日はどんな口実を作って、あの人に会いに行こうか。


順、
今日は部屋に帰らないでね

…………はい。


とりあえず。
染谷の部屋に泊まる口実はもらいました。はい。
(実際泊めてくれたかどうかはまた別の話です。はい。)
(膝枕はあたしがされる側でした。見上げた染谷の顔が近づいて、ちゅーされたときの感覚は、もう、言葉なんかじゃ言い表せないくらいでした。)





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順ゆかと玲夕歩。













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