現在完了進行形の続き。









天地無用の幸福論





タオル、ちょうだーい?

ヤだね


わざとらしく可愛いオネダリしてみたら、こちらを見もしないままで一蹴された。
つれないのはいいんだけど、拒否されるのも予想のうちだけど。
私を見てくれないのは、背中向かれたままなのは、ちょっと不満かなぁ。
なんて、ね?


んー、それじゃ柊ちゃんで良い、けど

お、…ぅわっ


にじり寄って、のしかかって。
さすがわかってる、振り向かれるときに死角から飛んだ拳を避けながらはじいて。
潜り込んだ懐、頬を寄せて、両腰をホールドして。
柊ちゃんが目論見に気づくまで待って、でも反撃までは許さずに。
胸元にキスひとつ、そのまま下って、右頬からお腹の辺りにすり寄せてあげる。
まあ概ね水なんだし、第二成分は柊ちゃんの唾液だろうし。
律儀に外されてるピアスの穴を舐めると、結構大きく震えた。あは、良い反応。


……てめェ、

なーまーえー

…ヤだね


面白くなって舐めて、ついばんで。歯で挟んだところで叩かれる頭。
一回り大きな掌が私の手の上に重ねられ、ぎゅっと一度握ってきて。
それから呆れ混じりの戯れが始まる。適当なようでその実よくわかってる刺激が、踊るように指先から指先に手の甲に与えられる。


どうぞー

……ん、


引き剥がされた右手は柊ちゃんの口元に。
そういえば、今日は背中、結構ひどく抉っちゃったと思うんだけど。
血の痕とか残ってるんじゃないかしら。爪の間とか、下手したら削った皮膚が挟まってたりして。
ま、柊ちゃんが良いなら構わないか。気持ち良いし。
いつもの結論で片付けて、しゃぶられてる人差し指に力を入れるよりは眼の前の肌に吸い付くことを優先することに決めて。
強めに吸って、できた痕に満足。もう一個、は脇腹につけてあげる。身動ぎを堪えた代わりに歯が当たった指先、口内で振ってあげたら舌全体で強引に抑えつけられた。
弱いの、知ってるってことを知られているから、遠慮なしにつけるキスマーク。


さえ、

ぅん?


身を起こそうとしてきたから大人しく退散。
足の位置がちょっと無茶だったせいでふらついたのを柊ちゃんが片腕で支えてくれて、そのままキス。
ゼロ距離間でやりとりしてるこれ、いろいろ混ざってるんだろうなあ。お互い気にする性格じゃないから、後で思い返すと結構すごいことになってることが多い。まあ、気にしないけど。
どうでもいい、の理由が変わったのは柊ちゃんのお陰だから。でも感謝を伝える方法は、言葉なんかには拠れないから。
考え事してるのに気づかれて呆れたように呼吸を奪ってくる。強引な意識の薄め方飛ばし方、嫌いじゃないから抵抗より従順を、けれど肩口には反撃を。
結局離したのは柊ちゃんの側だったから、追いかけることになって、その勢いで再び押し倒しかけて。
あーこれはこのまま再開かしら。思ったところでもう一度身を起こされる、引き剥がされる。


…シャワー行くか

……やめちゃうの?


立ち上がろうとする柊ちゃんに漏らした声は。
自分でも吃驚するくらい切実で、縋る響きを帯びていた。


紗枝がそーしたいなら

……やだ


自分の調子くらいわかってる。限界も、承知してる。
限界を知ったのは柊ちゃんのせいだし、我慢弱くさせてくれたのも柊ちゃんなんだし、そうだ大体柊ちゃんが休憩、って言ったんじゃない。
詰めていた息を吐いたのはほぼ同時。


んじゃ、やめねーよ。
まぁでもどーせ仕切り直しだし、ちょうどいいだろ


……それはそうかもしれないけど。
でも、シャワー、浴びて来ちゃったら。


……背中、大丈夫?

気にすンな。
つか、アンタの体力が尽きる方が先だろーし


シャツに腕を通して、にやっと笑う柊ちゃんは、悔しいくらいかっこいい。
悔しいから、嬉しい。背中めがけて飛びついたら息を詰めてくれた。
ちょっとだけ噎せただけで乗り切っちゃった柊ちゃん、悪態じゃなくてため息でゆるされた辺り、甘やかされてる。


そしたらする側に

したいのかよ? 

……ううん


やっぱりすっかり気づかれてた、らしい。
今日は、という枕詞が付くけれど、今日は。思いっきりされたい。どれだけ強引でも乱暴でも構わない。
きっちり応えてくれる、それで満足してくれる、安心と歓喜は静と動のようでいて、並び立てる、まとめて得られる。
柊ちゃんが、くれる。
嬉しいから、楽しみ。楽しみだからはやくもらうために、私もベッドの下、投げ捨てられてる服に手を伸ばした。









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