いつもの昼ドラ時空小ネタ。








声を上げた独裁者(夕順)





目の前のバカは、血を分けた姉で幼馴染で刃友で、バカでヘタレで。
――この期に及んで。


「――欲しがれないよ」

「どうして?」


綾那になら簡単に口にするくせに。
ゆかり相手にはもっとすごいのを、実際に、あげちゃったくせに。


「だって、あれは!」


“順のしたいこと、なんでもしたげるよ?”
囁いただけで、びくりと、隠しようもなく震えちゃった、くせに。

――ゆうほが。

わたしを言い訳にしてわたしの空白を乗り切った順がわたしを言い訳にして、こちらを見る。
祈るような請うような、わたしを欲しがってると錯覚させて、くれそうな、
諦めからはほどとおい目線。


「そうだね。」


「そういうこと」に、したんだもんね?

わらいかけるのは、こんなにも簡単。
かろうじて、手を伸ばしてはくれるけれど。
そっと、触れるだけで震えて、揺れて、それから慌てたようにばちんと、
ふたりでぬくもりをつくることを、拒絶して。

つかまえてはくれない、抱きしめてはもらえない。
うんとちいさな頃、まだ順が順であることに、わたしと遊ぶのに何の理由もいらなかった頃から、
布団の中で、畳の上で、着膨れするくらい着せられた縁側で。彼女と彼女のやさしさを待つことは、日常のとてもおおきな部分を占めていて。
待つばっかりなのは、ほんとうに望むものぜんぶがもらえなどしないのは、ずっと昔から。慣れきってしまっていた、つもりだったけど。

ねえ、順。
わたし、もういい加減、飽きちゃったよ。

順の臆病に苛立つのも、器用の方向性を間違えてるのに、歯噛みするのも。
わたしとほかのひとをくらべるのも、順と大切な人たちを並べてみるのも。
あたたかでずっしりとしたぬくもりの上で、暇つぶしをこえてぐるぐるかきまぜた、現実にもすこしだけ、飽いてきてしまった。


「ごめんね」


だから。
もうひとつだけ、言い訳をあげる。
謝った相手は順でもわたし自身でも無いから、はやく。口実にして。







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