まぶしすぎる未来（順と綾那） いやー、かっこよかったねぇ ……あいつのどこがだ？ バカをさらしただけだろうが。 吐き捨てる声が、どこまでも本気なのにあふれんばかりの優しさが混ざってるから。 嬉しくなって、微笑ましく思えて。その裏でちょっとだけ悔しくなる理由にはずっと気づいていたけれど、その理由ごと自分を認められるようになったのは割と最近の話。 時間って、大事だし確かに必要だったんだなあ。 口に出したら陳腐になっちゃう言葉ほど、世の真理なのです。 それを受け止められるくらいには大人になったけれど、実際口に出すのはまだ恥ずかしくって出来ない。 たぶんあたし以上に恥ずかしがるこの人に、しばかれそうだし。 そう？ でもあれをマジメにやっちゃうのが、はやてちゃんのいいところじゃない？ ほめてないだろ、それ すなおに反省して、すなおに次に活かせるところとか。 当たり前すぎてわかりにくい長所ばかりがあんたに似てるから。 ほら、やっぱり、満足の滲む顔しちゃってる。 ……照れ隠しの表情をのっけた顔が、傍目には険しくなったようにしか見えないって、どうなんすかね。 そういうところは染谷そっくり、なんて絶対口に出したりしませんけども。 あたし、はやてちゃんのああいうところ、好きだよ ……ほう さっきよりよっぽど分かりやすく低音になるのに、苦笑い。 でも廊下で突然立ち止まるのは迷惑だと思います、無道さん。 いっくら傍若無人なお方だと認識されてるからってねぇ。ああほらあたしまで生ぬるい視線向けられてる！ わざとらしく手を取って引っ張ると、わざとらしく振り払われてまた歩き出される。 あたしが周囲にへらっと笑ってみせるとこまで含めて、まぁ、いつものことです。 もちろん槙さんも好きだし、はやてちゃんも槙さんもかっこいーし、 それ守ってるあんたらも微笑ましいし。 ……ほめ言葉か？　それ 真面目な話になりましたー、ってのを察知してくれるのは流石。 そんでシリアスに巻き込まれてくれないのもさっすが、わかってるー。 茶化せないから、だから大事に思ってるんだと思い知らされる、あんたの好きなところ。 そんで、 でも同じだけ、あんたと染谷が組んで戦ってる姿も好きだったんだよ ……それで？ えー、だから、 あたしはどっちでも嬉しいし、どっちを選ばれてもおんなじだけさびしいと思う 本当の決着が来る前に、決戦を迎える前に、どうしても言っておきたかった告白。 今の綾那ならちゃんと受けとってくれるはずだと確信できたのは、さっきの染谷とのコンビネーションが嫌味なくらい決まっていて、そしてだからこそほんの少しだけ違和感があったせい。 それから、はやてちゃんの活躍が、成長が、夕歩にはらはらしっぱなしだったあたしにすら感じられてしまったせい。 あそこまで見せつけられちゃったら、こっちもさ。後悔しないようにしなきゃ、ってなるじゃんか。 ……おねーたまや夕歩からのエールかな は？ うんにゃ、なんでもない。 んじゃあたし、夕歩んとこ行くから おー、行ってこい。 うちのバカがバカやって悪かった、と言っておいてくれ ひどいなー 全くだな。 あのバカ、と漏らす声の色合いに苦笑いした顔は向けずに。 ひらりと手を振って、しばしのさよならを軽口も暴力も無しで済ます。 あたしの意見で組む相手決めるわけじゃないのは勿論だけど。ふたりとも（いや、はやてちゃんに槙さんも、夕歩も、たぶんあたしも）幸せになれる結末があるなんて思ってなかった頃のあたしを、笑い飛ばせる今が嬉しすぎるから、ゆるんでしまったこれは見せられない。 今日のお祭り、できたらあたしも参加したかったと、今度おねーたまにはお礼がてら伝えに行こう。 現実把握も未来の想像もくすぐったくて、それをごまかすように近道の窓から飛んだあたしに、綾那がバカ、とまたひとつ心地良い幸せをくれた。 -------------------------------------------------------------------------------------- １５巻ネタ。一応パターンＣのつもりで書きましたが、CP色は綾クロしかない……はず。 タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。