誰かをえらぶということは、他のだれかをえらばないことではなくて。
ただ、その人に少しの妥協を求めてしまうだけ。
えらんだ人に、あるいは訪れたかもしれない輝かしい未来をあきらめてもらって、あたしからのものではないしあわせを、いくぶん、(もしかしたら、とっても、)切り捨てさせてしまうだけのことなのだと、思う。




「いっしょうのおねがい。」




おもたいおんなに、なりたかった。

いつもの挙動も、ふだんの振る舞いも。あいのことばもぺらっぺらだから、紙ふぶきのようにふりまいて、ちらして、そうやってあなたのもとへも少しだけとどけることで満足してる、つもりでいて。

おさななじみがうらやましいわけじゃない。
刃友に、なってみたいとは思わなくもないけれど、ひとりしかえらべないなら夕歩がいい。あたしがあげられるしあわせはみんなあげるから、このオモチャみたいな楽園にいるあいだくらいは、ただ姫を守るお庭番でいたい。
クラスメイト、は、ちょっとだけいいなって思うけれど、今のクラスを失うのは惜しいし、ルームメイトなんて、そんなの、一日だってもたない自信がある。ムリ。死んじゃう。

ぺらぺらと回る舌を持つ、ぺらぺらふらふらの紙人間。
おもたくなれないから、えらべないままかかえこんだちっぽけな、(すっごく、しあわせな!)紙ふぶきに押しつぶされてしまいそうだから、だから、はやく。

友人でいるだけじゃいやだって、大事な人の大事な人であるというつながりだけじゃ、満足できないって。
そこまで吐いて、軽々しさをふらつかせながら吐き出して、そうしてあきらめる準備はできてるよって、あんたに、叫んで。

ねえ、染谷。

ムダ口ばっかりきいて、呆れられる行動ばっかり、して。
(だって、呆れられたかった。ため息ついていてもいいから、あたしのこと見て、ゆるしてほしかった。)
変なところにのぼるし、ぶらさがる、足は情けなくふるえっぱなしで、かっこわるいあたしに、たったひとこえ、かける、ことはさ。
槙さんを裏切ることでも、綾那にさよならすることでも、夕歩を悲しませることでも、ないんだよ。
あたしに、あんたがくれる幸せだけで生きられるようなおもたいおんなにしちゃうだけなんだよ。
あんたらしくなくほんの少し開かれたその口の端にきっとひっかかってる、出たがってる、たった二文字の魔法のことばで。
ほかの未来なんかいらないって、のぞんでないっていうのをみとめさせるだけ、たったそれだけなんだから、ねえ、染谷。
こんな、あたしを。
おもたいおんなだって罵倒する権利を、履行しては、くれませんか。






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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。










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