「ありがとう。」(綾クロ)





あやな、誕生日おめでとー

……どうも

あたしからのプレゼントはぁ、また後でのお楽しみということでぇ、

……は?

はい、はやてちゃん。

おー!


腰にどしん、と衝撃。
背や肩、頭にならなかったことについ感謝してしまった程度にはいい加減慣れ(てしまっ)た接触が、いつもとは違ったせいで自然、眉根が寄ったのが分かる。
平たく言うと、妙に体重がかけられている。そして順は何かを企んでいるときの笑顔で、その様を満足そうに眺めている。
……変なこと言うつもりならクロを振り切ってでも蹴り飛ばすぞ。睨んでもどこ吹く風、さわやかなのが無性に腹が立つ。


よろしくね

ん!

ちょっと待て順、……こらクロ!

にへへ、あやな確保! 
そんじゃーじゅんじゅん、行ってらっしゃい!

はぁい! そんじゃね、

……一体何なんだ。

えっと、パーティの準備!

……お前、それ、バラしていいのか?

うん。
どっきりにしないことにしたから、じゅんじゅんに勝てたんだもん。

は?

今、ここでこーして、

わ、

あやなといる特権!


笑顔でぎゅっと抱きついてくる、ちいさな熱を、思わず受け止めてしまったのは。
誕生日だから、という言い訳を立てたもののそれが、自分の誕生日なのが、……いや深く考えるのはよそう。


……お前のためじゃないか

うん、それでいーよ。


腹に乗った重みと温度、咲きっぱなしの笑顔。
曇らせたくない、手放したくないといつも思っているはずなのに、なかなかこんな風にはならない、原因は大抵自分の側にあって。


あ、ゆかりや先輩さんも呼んだから!

…は?

仲良くしてね!

仲良くって……そんなの、お前の方が、

あたしはいーの。あやなとゆかりの問題なの!


こうもきっぱり、言い切られてしまうと逆にむずがゆい。
けんかなどしていない。ただ、すれ違っていただけだ。
お互い、わかっているから、今でも時折ギクシャクしてしまう、本当にそれだけの話で、それだけなのに。
未だにこうやって気遣われてしまうと、逆ギレだとは重々承知しながら怒鳴り散らして、やりたくなる。
いや、しないが。何せ誕生日だし。16歳、だし。


それにあたし、ゆかりのこと大好きだし。

…それは、

あやなのこと、だぁいすきだかんね!

…どういう意味だ

ふふーん、いのりんとおそろいだもんね!


……そこで何故その人が出てくるんだ。
ゆかり登場、辺りから正直置いてきぼりだが、クロは楽しそうだし、ついていけていないだけで実害があるわけではないし、……好きと言われて、言われるだけに留めおいておけたし、うん。このままで良い。16歳万歳。

……ところで。いつまでこうして(いられ)るんだ。
聞いてしまったらその瞬間に終わってしまいそうだから、たぶん昨日のTシャツが下敷きになってる背中が少しばかり痛いけれど、このままで良い。













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無道誕2013。
タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。











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