0214




ラクロス部に入ってはじめてのバレンタイン、はじめて本命のチョコを作った。
甘いものは人前では食べてくれない、のはわかってたけど。
押して押して押しまくれば受け取ってはくれる、と確信してたし。
もしかしたら、家に帰ってから、ひとくちでも食べてくれるかな、と期待してたし。
チョコ酔いしたしー様えっちだったなあ……と思い出すと、鼻血出そうなくらい興奮しちゃう、し。

かんなに散々からかわれながら、はじめてかんなとは違うかたちを、一個売りの包装紙でラッピングした。
甘さ控え目にはしたけど、砂糖も愛もいっぱい詰まってる、トリュフ入りの小さな箱を枕元に置いて寝たからか、13日の夜は液状チョコの波にさらわれて流されて白い粉かけられて溶かされちゃう夢を見た。





「どうせどう渡したってからかわれるんですから、今渡します!」


部室に入って、しー様見つけて突進して、投げつけるように手渡した赤い立方体。
ひゅーっと口笛吹いたのはロッキーで、無言で拍手したのはくーみん。
なんでかブンブンが拍手を続けて、そのまま拍手の輪が広がって、そして案の定しー様の機嫌がどんどん悪くなっていく。


「……やよい」

「言い訳は先にしましたごめんなさい!
 言いたいことは全部書いたので後で見てください!」

「わーお、」


全力で逃げる私を止められるソラちゃんとかが反応する前に部室を飛び出す。
かんなはやっぱりにやにや顔だったし、後で何言われるかわかったものじゃないけど。
(うそだ。本当は全部わかってる。わかってるから余計にものすっごく恥ずかしい。)
いつもの、と言っていいだろう木陰に身体を滑り込ませて、いろんな意味で火照ってるのをなんとかしたくて、深呼吸をいっかい、にかい。
……しー様、あんまり喜んでなかった、かな。
やっぱり迷惑だったかな。チョコレートにしちゃったしな。
後悔するってわかっててあげたくせに。指の先から段々冷たくなってくのが、今の気持ちとシンクロしてるみたいで。
怖い。寒い。はやくしー様、来てくれないかな。呆れたってためいきついて、じろって睨んで。


「やよい」


それで最後には、私にしか見せない顔で。
……なんて思ってるから、いっつも怒らせるって、わかってるけど。
真冬の厳しさで降ってくる声は、凛として冷たくて、そしてそれなのにもう優しさをいっぱいあふれさせていた。






--------------------------------------------------------------------------------------

途中で力尽きた。
ハッピーバレンタイン!












inserted by FC2 system