いっぱいちょうだい(ゆらだち)






勢いよく抱きつかれたあとに獰猛なキスをされると、そのまま、食べられてしまいたくなる。
ゆうだち、ねえ、ゆう、だち、あなた、もっと、…そう、いい子、ね?
甘い声が、私の嬌声が、頭にがんがんと響くのはこの子が、私の両耳を、その小さな手で、塞いでしまっているから。
それがどういう働きをするかなんて、ちっとも知らない、私が、私自身が発した声も喘ぎも跳ね返って鼓膜の内側を反響して、どうにかなってしまいそうなことなんて、全く知らないままの夕立は、これが、私を一発でぐずぐずにして蕩かしてしまうことだけきっちり覚えていて、早急に事を進めてしまいたいときはいつもこの手段を使ってくる。
ゆら。唇を離す時間すら惜しいと言わんばかりに、長い長いキスのあとに齧り付いた、随分お気に入りらしい首の根元に噛み付いたまま、私の名前を呼んだのが、彼女によって塞がれた耳でもぎりぎり拾うことができて、……できてしまって、ぺたりとついた足のつけねが、はしたなく疼いた。


ゆう、だち、


ようやく両耳が解放されて、安心する暇もなく肩を強く押され押し倒された、ベッドと接地したときの衝撃はぐらぐらと、私の脳を容赦無く揺すった。
この子の顔すら、一瞬、霞んで、……これほど弱い私のからだなんてきらいだ。そう毒づく代わりに、もうすっかり赤い瞳になってしまった、かわいい子の名前を呼ぶ。
ぴょこんと、まるで耳のように立った髪が揺れる。本当に耳なのかもしれない。そんなことないって、何度も何十回も、もしかしたら何百かも、それくらいはこの子の髪を撫で、クシャクシャにしてきた私は、とっくに知ってるのに未だについうっかりそう思ってしまう、跳ねた髪はとても可愛い。
可愛い。のよ、夕立、あなた、


あ、……ぁ、


身を捩るなんて真似を、したら途端不満そうな顔をする、この子の髪を今度は引っ張ってしまいたくなる、それくらいには恥ずかしいところへの侵入を、今日はなんにも遮られずに成し遂げたせいでこの子はひどく嬉しそう。つうっと下着をなぞる指に、耐えなくちゃいけないのは、この先の刺激を、できるだけはやく貰うためだ。はしたない。……そんな羞恥、感じる暇すらゆるさないとばかりに、私を貪ろうとする彼女が、私のそれ、を、破ってしまう前に、ちゃんと脱がせてとお願い、するためだ。


うん、…ゆら、

っあああ!

ふふー、だいすき


そんな、恥ずかしすぎるお願いの前にショーツの隙間から突き入れられた、指が、あやまたず私の中にもぐりこんで、夕立が間違えたことなんて無いのに、もう、何度も、何十回も入ってるのに、いまだに途方もない多幸感に包まれる私を、夕立は、きれいなことばばかりで埋め尽くす。
下着の一枚や二枚、だめになっても、シーツがどうしようもないくらい汚れてしまっても、……明日、起き上がれなくっても仕方がないか、なんて。未だに思ってしまうのだから、浮かされた私は、まったくもって学習をしてくれない。


あっ、……あぁ! やっ、……ま、

だぁめ、


待てないよ、ゆら。
中指をあっという間に押し込みきって、残りの指で私をめちゃくちゃにしようと目論んでさっそく動き出した、この子とはまるで大違いだ。






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