一つでは足りないから(陽炎×夕雲)






シーツも布団もぐしゃぐしゃにして。
乱れた顔を、淫らな身体を、見せつけようとはしないときの方が、彼女は、ずっと熱い。
あてられた私の興奮具合に、ぎりぎり、気づかないでいてくれるのではないかと、思わせてくれるくらいに。


すごいね。
……ほら、髪まで、

あなた、…だって、

見えないくせに。

見せては、くださらないくせに。


そう、あえかに吐き出したのを最後にして。彼女はとうとう意識を手放した。


…はぁ……


ひと呼吸、ふた呼吸。ぐったりした彼女を抱え込んだまま、大きく呼吸をして、ひとひとり分の重みが意思を乗せてはいないことをとびきり注意深く確認して。
それからようやくこぼしたため息は、自分でも笑ってしまうくらいに安堵が溶けていた。

今日は、随分長かったな。
木枠すらがたついている小窓から覗く外がどうみても朝であることに苦笑い。もうそういう次元じゃないか。
一週間丸々非番なのは、そしてそれが彼女と重なるのは、すごく珍しい。というか6日もかぶるのは初めてだ。私も彼女も、主力艦隊や輸送部隊の一として引っ張りだこ……なんてことはないけれど、それだから余計に、お互い、しようもない役目がひどく多い。
陽炎型の一番艦であることを疎んだことは無いし、夕雲とこうなったことを、(こうしてることを、)後悔するなんてとんでもないけれど。
けれど、で、つないだ先の言葉を、彼女に伝えたことは無いのだから、夕雲は、
さすがに秋雲のために抱かれてるわけではないだろうけれど……うーん。
嫌がらないくせに。媚びも痴態もみせてくれるのに、受け入れられている感覚はひどく希薄で、必死になる私を、見せたくなくて。
……欲しがるのは私だけじゃないと、思いたいのに思えないから、怖い。
……今日は、最後、名前じゃなかったな。
不意に思い出された、そんな事実に傷つく私には、彼女のこのあたたかさは重すぎる。





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