ころころ たたん(ゆきひえ)







服を脱がせることに手間取ることは(抵抗されることは)なくなったけれど、
このひとは意外に恥ずかしがりで。
その昔。指摘したらそのまま顔を覆われて、しばらくチューするのに難儀しました。
もっともその分サラシを取り払うのはいつもより格段に容易くて――それに気づいた頃には比叡さんは、もう、羞恥以外の理由でも真っ赤になってしまった顔を、おずおずと、私に晒すしかなかったのですが。
こういうところをみると、あんまり学習できてないなぁって思います。比叡さん。


にっ、

…猫ですか。ひえいさん、


にゃーって、鳴きますか?
耳元にかぷり、かみついて。
そのまま囁けば、うー、と、可愛らしい唸り声。
左手で感じてる彼女の心臓の音はひどく強くて、はやい。


ゆきかぜ、だって、

えー、

わぷ、……っ、…あ!


ざらりと舐め上げた舌先は、まぁ、確かに、幾分ざらついてるかもしれません。
ほかのひとと比べたことはありませんが、たぶん比叡さんよりは。だいぶ凹凸があるみたいです。
彼女の輪郭はひどく甘い。幸福な錯覚が、私の目を細くします。


……っ、…ほら、

んぅ?

そっくり。


とろりとわらう比叡さんは、この喩え話を随分と気に入った御様子で。
私が促す前に、にゃぁと鳴いて。ちょうど離れていこうとしていた私の顔を捕まえて、捕まえたまるごと、遠慮なしに頬ずりをしてきました。
呼吸に合わせて揺れる弾力面が、くすぐったいというよりは熱くて、熱いというよりは気恥ずかしい。
擦れていく頬と頬、今度は比叡さんの方がちょっと猫のように、
なんていうと、気分を害してしまうかもしれませんから、私からは言いません。
耳や尻尾をつけてもらうよりは首輪がいいなぁ。そんなことを考えていたってことも、もちろん。






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さんかいまわって なんて鳴こう(雪風と夕張/↑とこれの続き)




というわけで夕張さん、首輪をください

……はいはい、いいけど。
今日明日じゃ無理よ?

はい。急ぎません。

……本当に比叡さん用?

はい。

猫仕様の……ねえ。

えへへ、かわいいのでお願いしますね

どっちかっていうと犬みたいよね、
雪風ちゃん、あなたも。

それ、姉さんにも言われました。

…ああ……
……同じ話、陽炎ちゃんにもした?

はい。
そしたら夕張さんに頼んだらって。

……毎度ありがと。
なんなら尻尾ならすぐに用意できるけど?

しっぽ? 猫さんのですか?

試作品なんだけど戦艦なら、

…どうやってつけるんです?

有り体に言えばアナルパール。

あな……えっちの小道具ですか?

そーだけど、
……知らないならやめといた方がいいと思うわ。

じゃあ、そうします。

まあ比叡さんも知らなかったしなあ……
……そういうところもそっくりっていうか、

え?

お似合いって言ってるの。

ええと、ありがとうございます?

……こっそりばらしちゃうとね。
さっき比叡さんも来たのよ。

へっ!?

「雪風に似合う猫耳をください」って。

……ええー……

とびきりかわいいのを、作る約束だから、

……それはいいですよぅ……

どうせなら、同じ日に届けてあげるわ

…わぁ……






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マーブル・オレンジピール(陽夕、赤翔/↑の続きなのでこっち入れた)




ねえ、どう思う?

…どうと言われても……

昔から手のかからない子だったのよ。

それは、そうでしょうね。

相談されて、嬉しかったのよ……

それも、そうでしょうね。

嬉しかったのに!

…この状態で、叫ばないでくださいます?

あ、ごめん。
痛かった?

…いえ、

…気持ちよかった?

張り倒しますよ?

あー…くすぐったかった、かぁ。

ご想像にお任せします。

んー……でももーちょっとこうしてたい……

はいはい、お好きにどうぞ。

夕雲の愛がない……

これ以上無いくらいにあげてる最中じゃないですか……


ひとの胸に吸いつきながら、勝手なことを延々と喋り続けて。
まあそんながっつくような日でも無かったから、好きにさせていたのは、愛情では無いとおっしゃいますか。そうですか。
今日だって。ふた家族分の書類、あの量をひとりで頑張るとか突然言い出すから。
仕方無いので休憩用のパウンドケーキでも焼いてあげようか、そう思って生地を捏ね、オーブンに放り込んだところであなたを予約していったはずの雪風さんが私を探しにやってきた。
ちゃんと焼きあがった頃に一旦戻るつもりだったのに、まぁ我ながら溜め込んだものだという書類の山と格闘しているうちにすっかり頭から抜けてしまって。気を利かせた翔鶴さんが取り出しておいてくれなかったらあやうくせっかくの物資を無駄にするところだった。
おいしいと、そういってくれたのは嬉しかったけれど。
翔鶴さん(と赤城さん)の分を取り分けても、お互いの妹たちみんなに渡る量には一応なってほっとした後、夕雲の分は?と首を傾げたこのひとに、無断で口内まで突っ込まれたケーキの味と言ったら、……もう!
それが功を奏したというには自画自賛が過ぎるものの、恐ろしいスピードでノルマをやり遂げた陽炎さんと倒れこむように踏み込んだ、本来なら、私とその妹たちの分の書類がうずたかく積まれているはずの部屋。
休憩室という名の言い訳がついた、……まあだいたいはこういうことをするために使われている、三畳ぎりの。夕雲型ネームシップに与えられた作業部屋。
書類上の所有者は私、なので。愛が無い、などともう一度言おうものなら、いつだって叩き出してあげます。





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