明けて暮れる(翔鶴×赤城)






しとりしとりと落ちて行く。
滴を数えているうちに終わるかと思っていたが、そうでも無かった。

畳の目、天井の木目、あるいは彼女の必死な様子、私の名前を呼ぶ回数。
数えて、並べて、彼女の前で俎板になっているうちに、時は流れてしまうだろうと予想していたのに。
想像の翼は随分乱暴に私の見込み違いを嘲り、ぬるく重い空気をかき回すこともなくふわりふわりと漂っている。
ふっとしたときに。外の雨音が信じられないくらい強く響く。
それはたとえばこういうとき。
彼女が、私の名前を呼んだあと、私に触れるまでの。瞬間を三つくらい重ねる間、すとんと落ちる隙間。
からからではなく、ざあざあと。錯覚といっていいだろう幻聴の向こう側から、聞こえるそれを聞いてしまう私が不義理なのか、
たったわずか、そればかりの空白しか私に与えずに引き戻す彼女が滑稽なのか。
こんなことを、最中に。ずっと考えていられることは果たして不幸なのか、可哀想なのか。
軽い軽い彼女の強い力、おもい愛情、傾斜する感情、天秤ばかりはいつまでも目方をずらせずに。
しとりしとり、落ちていく滴は的確にその量を増やしてゆく。
過去は変えられないし、未来はあげられないから。いまを量り売る。


――あかぎ、さん、

なあに?


この子の未来なんて、保証できない。
どうせわたしは、先に沈む。






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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。









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