いきをしている(夕立×由良)






ぐっすりと眠るこどもの頬を撫でる。
最初はつつこうと思った。その前には密やかにソファに近づくための言い訳が必要で、ああやっぱりちゃんと毛布をかぶって寝ていない、夕立ったら。と言ってやりたかったのに今日の彼女はお利口すぎるくらいお利口に筒状になった毛布の中ですやすやと眠っていた。
誰の仕業か、想像はつくけれど。妬くような相手でもないものの、残念に思ってしまうのは彼女ができうる限りで最高のかたちの休息を与えられている夕立が、わたしがほんの少しでも入る余裕がないほどにソファを占領してしまっているから。
すきな子の寝顔は可愛い。
指先を唇にすべらせる。今度こそ軽くつついてみても、ふにゃりと喃語を口にすることも起きているときのように咥えて噛みついてくれることもなかった。深い睡眠。あどけなくゆるんだ表情はただ穏やかで、悪夢にも幸福な夢にもとらわれてはいなさそうで、だからある意味では、彼女のことはわたしがいま独り占めしている。
冗談のような強がりをひとつ吐いた。こんな悪い唇で彼女のそれを、このふくりとした稚いものを、こんなときにまで奪うような真似はとてもできない。
さいわいのかたちは、できるだけたくさんあったほうが良いのだから。












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