ときめき梅雨前線(加賀×赤城/二代目の梅雨・そのあと)
加賀さんがお布団を敷いてる間に湯呑を片付けて、障子戸を閉めて。
振り向けばうわ掛けを敷布の外にちょうど置いたところだった加賀さんが困った顔をしてみせたから、ふふっと笑って自分からお布団に飛び込んだ。
口付けをせがむのもまどろっこしくて自分から唇を重ねれば、ふたりの間にはらりと落ちた髪をそっと払ってくれる指先が嬉しい。
首に腕を回せば背を抱きとめて、そのままそっと横たえてくれる。すき。
これくらいがちょうどいいわ
え?
あかるさ。
作られた明かりは明るすぎるし、月や星の灯火を求めて障子戸を開けたままでするのも落ち着かない。
真っ暗闇でするのも嫌いでは無いけれど、加賀さんの顔がほとんど見えないのはやっぱりつまらない。
よく晴れた日の真昼間からするのは、……だって、さすがに、ねえ?
……さがしてきましょうか
え?
…照明を。
加賀さんったら、ごく真面目な顔でそんなことをいうものだから。
ふっ、……ふふ、
…あかぎさん?
それはさすがにはずかしいわよ
……そう、ですね。
一瞬は、いいかもなんて。ちょっとだけ思ったけど。
いちばん面白いのはそれを選んでるときの加賀さんだろうし、次に笑いを呼ぶのは部屋にある無駄にしか思えない照明器具の理由を聞かれたときの加賀さんだ。
困ってる加賀さんをみるのはたのしいけれど。誤魔化しに失敗して、最終的にもっと困ったことになってしまうのは流石にいただけない。
だから困った顔を楽しむなんて真似をするのはこういうときだけにしておくことにしているの、……なんて、ね?
……あかぎさん、
ええ、
たくさんの口付けがわたしの顔の上を通っていって、そうして。
一度、ひときわ深いのを唇で受け止めたら、こんどはわたしの番。
今日は加賀さんの顔や首筋やを撫でさする代わりに右腕を取って、すうっと指先を滑らせてから、彼女の中指に狙いを定めてぺろりと舐めあげる。
支えた左手に硬い感触、ここにこうして胝ができる前から知っている加賀さんの指。
それを自慢できるのは、わたしが、この加賀さんといっしょにいられるのは。
いまの神仏には祈らないけれど、感謝くらいはしてあげていい。
そのままちぅっと吸い上げればひくっと鳴る喉に、思わずこちらもころころと笑ってしまうときゅうっと眉根が顰められた。
こういう悪戯に怒ったり、呆れたり。
あるいは仕返ししたりしてくれるにはまだまだ至ってくれない加賀さんは、今日もわたしの欲を煽る。
嗜虐か被虐かと言えば、嗜虐。
けれどそれは、可愛くて、思わずこのまま食べちゃいたいというような。
……ん、
促してようやく、わたしの胸に近づいてくれる手。
さっさと脱がせて欲しいのに、ゆっくりと部屋着の上からなぞっていかれるのは、ほんとうは気持ちよさよりも焦れったさの割合がずうっと高い。
それを手管として使ってくれるならまだしも、……なんてやっぱり、加賀さんには高望みしすぎよ、ねえ。
わたしの口の中でおとなしくしてくれる二本の指に語りかけてみたって、持ち主に似て馬鹿正直なぬくもりはやっぱりうんともすんとも動いてくれない。
……そうかと思えば唐突に。
っ、
……ふ、
わたしの口腔からそれを抜くことなしに、唇をすり寄せてこられて。
びっくりして見開いた目に、加賀さんの長くて綺麗な睫毛が勢いよく近づいてきた。
自分のそれ、を引き抜くのも惜しいと言わんばかりに舌先がねじ込まれて、
こんなに強引に奪ってくれるなら、最初からもっとぎゅうっとしてくれればいいのに。
やさしい加賀さんだってだいすきなくせに、わたしはそうやってかわいくない駄々を捏ねる。
口に出してしまえば加賀さんは、どうせまた生真面目に考えて、考えぬいて、至極真面目に惚けた回答をくれるのだ。
わかってるから、ぜったいに口になんか出してあげない。
*
晴れたら、一緒にお布団干しましょうね
……それくらい、わたしが、
いっしょにやるのがたのしいのよ
……からかわれますよ?
そう?
そうかしら。
雨で湿気ているのはどこでも同じでしょうし。
もしかしたら、非番をいいことにこうしてる子達は他にもいるかもしれない。
別に誰かに自慢したいわけじゃないけど。バレたって構わない子達を前にいちゃつくのも、けっこうたのしそうだ。
ふふっと笑えば、また困ったこと考えてますねと眉尻を下げた情けない顔が真横でふてくされることも出来ずに。
うん、でも、こんな顔はやっぱりわたしだけが知っていればいい。
だから今度の機会には、ぜったいにあなたに番傘をさしてもらって、間宮まで行きましょう?
丸一日非番なら、そうやって甘味を楽しんでなお、さっきまでと同じよう睦み合うことだってできるに違い無い。
--------------------------------------------------------------------------------------
ざるそばさん宅のおふたりの設定、お借りしました。
お誕生日おめでとうございます。
|