だいすき






ご飯を食べる量、自主練をこなす頻度。
いちばんは出撃する海域だとか間隔だとか、まあその辺から。
加賀さんが「その気になる」、もっとあからさまに言ってしまえば「サカる」状態の判別をつけるのは、ここ数年で自分でも呆れるくらいうまくなった。
なにせ恋人ですから、わたし以外で発散させてあげる気はありませんし。
「恋人とふれあいたい」なんて甘ったるい気持ちだけでしか加賀さんの気分が、そう、なるわけじゃないことだって、とっくに知っているし受け入れてもいる。
空母寮の片隅でわたしがそっと腕を引けば、諦めたような顔をして俯く彼女は、自分自身のそういった衝動とまだ折り合いきれていないことすら、最近は可愛く思えるようになってきてしまった。


かといって布団の上で冗談混じりに手を伸ばした途端、問答無用でのしかかられ押し倒されるなんてのは、さすがに初めてでびっくりしてしまった、わけであります。
あれ、もしかしてきょうの加賀さん、珍しくわたしを抱きたい気分ですか?
こっちにだって事前準備というものがあるから、……まあ抱く側じゃないなら心の準備くらいで済むはずではあるけど、キスする前から鼻息が荒くってわたしに頬ずりしてくる加賀さんの瞳を見つめようと頬と顎をてのひらで捕らえたらふるふると首を振られる。
……えーと?


…んっ、


吸い上げて貪るのではなく、誘い込むかたちに絡め取られた舌の根は、そのまま加賀さんの口内に引き込まれた。
あっという間にスイッチの入ったわたしが歯列をなぞれば喉を鳴らして喜ぶし、はしたない音を立てながら唾液を流し込めば待ってましたとばかりに飲み干される。
……そうとう溜まってたんだなぁ……なんて思うと同時に、加賀さんの恋人がわたしでよかった、とも強く思う。
恋人不在で行きずりの相手となんて言語道断だし、この習性(高速修復材がある程度関係してるんじゃないかなぁってのは、空母寮全体の様子を見て思う勝手な予測だ、)を悪用し兼ねないひとに引っかからなくて良かった。ほんとうによかった。
いつだって、とは流石に言えないけれど、(わたしだって姉妹や任務を優先すべきときはそうする、)ほんのわずかな例外を除いただいたいのときは加賀さんのことをいちばんに考えてあげられるひとがこんな加賀さんを掌中に収められているというのは、とてもしあわせなことではないだろうか。
誰にとって? ――愚問。


ひっ……


結局跨られた体勢のまま、加賀さんの下着だけ落として足の付け根を撫でさすり続けていた、それもそろそろ加賀さん側に「慣れ」がみえてきたから肉芽にはじめて明確な狙いをつけてなかば押し込むように触れる。途端腰が逃げて、息がかかる距離でいやいやと首が振られる。
そんな、いまさら、ゆるしてあげるわけ無いでしょう?


きゃぅっ、……あ、ぁ、……ふあぁ!!


たん、たん、と膨らんだそれを弾く。そのたびにびくびくと面白いくらい震える加賀さんは頭を振り乱しながら泣き叫んでいて、喘ぐというには激しい痴態が、わたしの上で、


…もっと、

んんっ! ……む、り、……っぅあああ!!


どろどろに溢れてきて、狙いをつけ難くなったから摘んで転がせば仰け反ったまま硬直して、ぱたぱた、胸元にまで体液がかかった。
あ、イっちゃった。このまま可愛がり続けるのは本当に苛めになっちゃうから、右手を引き抜いて脱力した加賀さんの腰に回す。
がくりと落ちてきたおでこがわたしの肩に乗せられ、一瞬弛緩した腿はそれからきゅうとわたしの胴を挟んだ。足りない、じゃなくて、またあとで、のサインは指摘すると赤くなって狼狽えて、それから拗ねてしまうから受け取ったことだけ知らせるために回した腕に力を込める。
「あとで」が始まるまでにキスはたくさんするけれど、唇同士を重ねる時間はほんの少しだけ。
まだ荒過ぎる息を忙しなく吐いている加賀さんはそれだけですごく幸福そうに目をとろかせる。
(……舌も呼気も、もちろん唾液も送り込まない口付けは、このときにしないと後で物凄く不満そうに詰られる)
すき、と言われたから瑞鶴も、と返せばふにゃりとした笑みが、眼前で惜しげもなく晒された。
情けないことに、(っていうと加賀さんはますます喜ぶんだろうけど、)加賀さんの瞳にもおんなじような表情が今日も懲りずに映っている。









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