星の色を教えて(嵐と萩風)
ただいまの声が控えめで且つ、ぱたりと扉の音が大きめにしたら、嵐がひとりで帰ってきた合図。
生まれ直してからの着任順で決められた6人部屋の片隅で、ほかの子に邪魔をされずに私に構われたがっている、合図。
……ひどい顔
…ん。
もう、嵐。
んー?
わたし以外にそんな顔、見せちゃだめよ
……見せねえよ。
野分には、
見せない!!
そう。なら、
うひゃっ、
――いいの。
……サンキュ。
ふふ、
……でも、くすぐってぇって、
いいでしょ、
そういえば黙りこくる嵐のつむじは好き。
ちっとも動かないのにあったかい、嵐の「生きて」いる証はとても好き。
しばらく経ってからようやく、はぎ、と小さく落ちる声は少しだけ嫌い。
不毛ね、って言えばどっちが、って返されるのはわかってるから、私以外の人を呼びたいから呼んだ私の名前にはこたえてあげない。
はぎみたいにも、どうせなれねえし、
そうね、
あいつみたいには、もっとなれねぇし、
そんなことないわよ。
あんな一途に、とか、ムリ、
わからないじゃない?
…なりたく、ねぇし、
そうなの、それなら仕方無い。
もっとも私に言わせれば嵐も大概一途だし野分にも結構似ている。
天津姉さんを遠目で見つめている野分をこっそり、舞風が照れたように指差して笑ったとき、確かに私の隣にいた嵐がふいっと目を伏せたときの憂い顔なんてもう本当にそっくりだった。
(あとで舞風と一緒にふたりしてとっても笑った。)
格好いいふたりの隣にいる私たちは、結構格好良くないところもいっぱい見ているし、そんなところ込みでこの姉妹たちのことが大好きだ。
ぽんぽんとあやせばむうっと膨れる、そんなところも野分と舞風がおんなじようにしてたらとっても面白いけれど。
流石にそこまではお互いに話したりしないから、わからないままだ。
同じ駆逐艦に恋ができるだけでしあわせよねえって、そんな愚痴なら舞風と気軽にできるんだから、私だって聖人じゃないし嵐にこうやって寄りかかられる資格があるかどうかだって、あんまり自信は無いのだけれど。
野分と何処で会ったの?
…寮の中庭。
一緒だった?
…んー、…うん、
……そんな感じ。
そんな私の事情と葛藤なんてどうでも良くなるくらい、……なにせ。
恋をしている姉の瞳は、とてもうつくしい。
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嵐→野分(→天津風)とか、書かなきゃわからない不親切仕様。
「空母寮に行く用事なんてそんなに無いのに、嵐は良いなあ」という赤城も加賀も大好き(Love的な意味で)な萩風ちゃんが書きたかったのでまた次回。
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