生まれ直したかったの(赤城と加賀/赤翔、瑞加賀)





ゆめをみていた。
たくさんの敵を、それから味方を、殺したゆめだった。

こういうときは加賀さんに寄り添った方が安定すると体感上知っていたから彼女の部屋に立ち寄れば、物凄く微妙な顔で出迎えられる。
同室の彼女の方がずっと慌てていた、そうしてあっさりと席を外してくれた、瑞鶴さんがいつの間にかずっと大人びた表情をすることになっていたのに今日の今日まで気づかなかったのはきっと私の怠慢なのだろう。
ごめんなさい、と、謝ったのはきっと目の前の加賀さんのためではなく、そんな瑞鶴さんのためだった。


……やめてくださいよ、そういうの

…こういうの?

……もう、赤城さん。


怒りますよ、なんて。
加賀さんが私に怒る、なんて!! 
数年前ならとても考えられなかった事態で、でも眉根を下げて困ってる様子はあの頃にも微かに覚えはある気がして、だけれど当時なら全く気にもしなかっただろう私がそれに気づいてしまえたことが、気にかけてしまえることが、嬉しいと思うきっかけも功も大体は翔鶴のせいといっていい。


ゆめをみたのよ


翔鶴には、あんまり知られなくないゆめ。
知らないわけが無いから、知らぬふりをしていたくなる、たぐいの記憶。


……それは、


飛龍たちを呼んできましょうか。
ぽつりと落とす加賀さんは、お互いに恋人を得る前と同じような優しさと臆病さだからふっと錯覚してしまいそうになる。


あの日じゃないのよ

……それなら、

でも、翔鶴じゃ駄目なの

……そう、ですか

そうなの。


もう、物理的にもたれかかったりはしない。
ぽつぽつと落として行くのが、加賀さんを苦しめると知ってそうする私が、それを許されている私が、だって翔鶴じゃだめなんだものと呟く私が、いつの間にか艦の私ではなく今の女の姿でいることが、心の底からおぞましくて同じくらいに歓喜している、あの頃、いまもっている手の指程度ではとても数えられないくらいにたくさんのひとを殺した、私が。
自我をもっていることこそが憎いと、告げるにふさわしい相手はきっと加賀さんでもないのだろうけれど。
夢見が悪いときくらいはこうやって加賀さんと無為な会話をするのを当然のようにゆるしてくれる翔鶴に不満など、抱く方が間違っているのだろうけれど。
誰も、私が悪いといってくれないから。
いちばん、私が悪いといってくれない人に私は今日も愚痴を吐くのだ。
もう、届かないひとに語りかける、代わりに。



















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