えらぶ、なんて残酷なこと、(赤城×翔鶴)






……だめじゃ、ないでしょう?

………ですが、


ゆるりと揺らされたのに、抗ったのは反射だ。
強くきつく、支配しようという意図で押し付けられる力には、逆らう気など起きないのに。
赤城さんが私をやさしく扱おうとすると途端もたげる不安感は、少しだけ失望に似ている。
この人が、私なんかに、気をやるなんてことがあっていいのだろうか?

妹には、翔鶴姉は自己評価が低すぎ、と言われた。
もっと自分に自信を持ちなさいと、ほかならぬ加賀さんに諭された。
とんでもない、私はおそろしく欲張りだし、傲慢で、自負心も嫌になるくらい高い。
僚友や護衛艦たちに、翔鶴さんは自分のことばかりですよねなどと暗い目を向けられるときさえあるというのに、この人たちはいったい私の何を見ているのだろう?
身内なら盲になるのか。それとも他の空母もみなこんなものだからか。
ひとたび「外」に出れば通用しない常識すらが私たちにとっては当たり前で、枷とも思っていなかったけれど、あるいは。


……もう、

…っ!!


今度は明確に、腰が跳ねた。
そうであるか否かというなら情事の真っ最中ではあって、けれど時間や欲に追い立てられるような状況でもなくて、たとえば明日のご飯はなんでしょうねとか、先日見た執務室にいけられていた花が綺麗でしたとか、そんなことを話しながらでもゆるされる空気。他の女の名前を出したらそれなりにはひどい目に遭うだろうか。どこかの男の名前を出したら鼻で笑われ、私も彼も等しく道化と化すに違い無い。審判をする赤城さんの見極めをあやまることに、恐怖心はとうに抱かなくなってしまった私。
さっき私が、すだれのように垂れてくる髪をすくっては弄んでいたときは目を細めてさえいた赤城さんに、ふっと嫌気が差して手酷い真似のひとつでもされるよう、仕向けてみたのも同じ、私。
無様に失敗して、結局は甘やかされていることに、そしてそれがどうやら赤城さんのいまいちばんやりたいことであることに、いまだに慣れない私がとうとう根負けして深い息を吐く。
黒髪を絡ませないように後頭部まで回した腕がとらえた赤城さんの、唾液より先に落ちてきた熱い吐息が肺を汚した。


















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