追いつ追われつ(瑞鶴×加賀)







…ぁ、……あ、……いっ!


結局私の我慢が足りなくなって振り向いてしまった先、歯を食いしばってる加賀さんは今日もすごく可愛い。
一歩間違ったら虐めだよなあ、思いながら今日もまたねだってしまった、加賀さんがくわえこんだ小さな玩具とそれに翻弄されてる可愛い姿。
本当に嫌なら拒絶してくれるはず、っていうのは付き合い始めの頃は厳然と思ってたし、いわゆる倦怠期事件の前までだって固く信じてたけど、最近は実はそんなに自信が無い。
この人、私が欲しがったらなんだってくれるんじゃないのって。自分が嫌なことだって、拒否しないんじゃないかって。
加賀さんの痴態は可愛すぎて、私だって時々息を詰まらせちゃうくらいで、そんな加賀さんはこの悪戯に関しては一度も嫌っていったことが無い。
最初に提案してみたときはは呆れきっていたし、そのあとも冷たい目はしょっちゅう向けられるけど、……本当はそういうときの方が、加賀さんの本心がわからなくて怖い。


……んっ!


ぎゅ、と丸め込まれた指先。座ってる方が辛いって言ってたけど、この部屋で立ちっぱなしなのも明らかにおかしくて、私が持ち込んだ時間潰しの書類ももうすぐ終わる。
手伝いましょうかと冗談でも言われなかった辺り、加賀さんの状態をよくあらわしていて、私の機嫌も体温もますます上がるというわけです。


かがさん、もうちょっと、なので、

……っま、って、……ねぇ、……ふ、ぁ、……っぅ、

はーい、いきますよー、

んあ! ……あ、っ!!


最強ではないけれどふたりでこうして遊ぶときは一番強い値にして。
見ていたら私の作業は絶対に進まないし加賀さんも声を殺しきらないでいてくれてるってわかってるから、ベッドの上で全裸でへたりこんでる彼女にくるりと背を向けて備え付けのちゃちな机に向かい直す。
いつも寝泊りしてる自室……よりは少し狭い、そして防音性はとても優れている部屋。指輪を持っているものにだけ与えられる、通称士官室なんて悪趣味な名のついた小部屋棟は、口さのない者の間ではもっと下世話な名称で通っている。
実際にその評価そのものの使われ方がしているのだから、私たち所有者だってあえて否定はしないし、たまに盛り上がった人たちが廊下でちょっと激しいプレイをしていたって見て見ぬふりをするのが暗黙の約束だ。
いや、私はそんなことしたことないよ? 加賀さんの可愛い姿、他のひとには絶対に見せたくないし。
加賀さんだって見せたくないだろうし、そもそも第三者が居る前では見せてくれないだろうし。
その信頼は昔から今に至るまでずっと変わらない。蕩けた姿は演技なんかじゃないけど、本気の本気になれば鉄壁の理性で抑え込めてしまうのが加賀さんという人だ。
そしてもしそれに失敗したら、たぶん死んでしまうのだろう。


ふっ、……ぅ、……あ、…ぁ、

かがさん、…ありがと、……ねえ、

……ま、だ、……っ、


加賀さんの、そういう境界線は、見誤るつもりは無い。
もしそれが本当の本当に私がやりたいこととかぶったら、……いやえっちなことじゃなくてさ、真面目で大切なところで衝突したら、私は手を引く覚悟でいるけど。加賀さんの方が先に気づいて譲ってくれるんじゃないのか、そんな思いが消えないのは喜びでは無く純粋な恐怖だ。
いまだって、ほら。ねだるんじゃなくて私が感謝するタイミングを先に怒ってきた、加賀さん。もう限界ぎりぎりなのに、ふたりっきりなんだからもっと素直に快楽を追えばずっと楽に高みまでいけるだろうに、きっちり我慢しきって苦しみきって、どうせ触れないならと後ろ手に縛られることすら自分から提案、してきたりして。
私と抱き合うことが好きなのは、私にこんな辱めを受けるのが好きっていうことにはならない。
加賀さんが溜まってて昼間から溺れるように抱かれたいというのと、私がそろそろローターでめちゃくちゃにされた後の加賀さんを可愛がりたいっていうのが、等価で成立してしまうとも、あんまり思っていない。本当だよ?


よし、

……ん――!!


元々そんなにやる気の無かった提言レポートをしまうと同時に終点を声で示せば、応えるように加賀さんが高い声で弾ける。
手慰みをパズルにしてみたり、あるいはずぅっと加賀さんを見つめていたりもしてみたけど、こんなに乱れてはくれなかった。
そんなに回数を重ねたわけじゃないと思ってたけど、これも結構、前戯のパターンとして息が長い、ですかねえ。
あ、でも、それだけ長い間加賀さんといたってことだと考えるとちょっと嬉しいな。


っくぅ、…や、ぁ…ああぁ……っや!

ねえ、もうちょっと、

や、…めてって! ……ばか!!


余韻を余韻として楽しんでもらえるよう、弱めるのもその幅もいつも通り。
それなのに今日の加賀さんは高みから降りてくるのがずいぶん遅い。
ちょっと、溜まりすぎじゃないですか? そんなになる前に自分で処理するか、あるいは誘いに来てくださいよ。忙しくったってそれくらいの時間、取れないほどの下っ端からはとっくに卒業しましたよ。
あなたと直接組むよりも、あなたの支えとなれる確信を得られる作戦に参加する方が、やる気も結果も上がると知ったのも、もう、ずっと前の話。


ほどかれたい? ぬかれたい?

……ぬ、いて、

…っ、……ん、


あんなに喘いでたのに、一目でわかるくらい太腿もしとどに濡れてるのに。
ローターの震えが止まったとたん腹筋やら何やらを使って膝立ちになって、私の唇を確実にとらえる加賀さん。このまま私が甘えても倒れないままでいてくれるのだろうけれど、安心してキスに没頭できるよう後頭部に右手を回した上で左手で玩具を引き抜く。びくりと震えても離されない唇は、最後には私のそれを甘噛みして来さえした。


……っと、

…いい、から、ずいかく、


そのまま器用に膝の上にのしかかられて、自分の服を脱ぐのも加賀さんの拘束を解くのも止められて。
応えるのはもちろん吝かで無いから、承諾のための音だけが立つキスをひとつ。外の蕾に触る前に一本、するりと潜り込ませてから。


っああ!!


肉芽を撫でると同時に胸に吸い付けるように。逃げる腰に手がちょうど滑り落ちて、そのまま一緒に加賀さんの手首が不必要に傷ついてないか、確かめられるように。
こんな計算も脳裏で瞬時にできるようになってしまった。私に触れられているときしか上げない声を高らかに奏でる加賀さんは、ぐずぐずに蕩けてる内壁を容赦なく締め上げてくる。


いっ、…ちょ、……かがさん、

ずいかっ、……もっとっ、


そんなおねだり、こんな序盤から言わせちゃうのはちょっと不甲斐なかったですね。
ごめんなさいの代わりに強めにひっかけば、擦り付けられた肩口が熱い。
そろそろ抱きしめられたくて、マジックテープの端に手をかければ鎖骨の上でいやいやと首が振られる。それなら素肌で加賀さんを感じさせてくださいよ。加賀さんの手首を解くのを諦めて自分のシャツに手を持っていけばそれにはずるりと落ちるようにくだってきて手の甲を噛まれた。


ま、だ、……だめ、

…えー……

…っふ、…ふふ、……ずいかく…、


右手は止まっていたのに膣内がまたぎゅうと締まった。これは私を煽るための純然たる誘いで、加賀さんのとびきり意地悪な手管だ。
さっきまでは意地でも呼んでくれなかった私の名前を、こうやって触れる度に囁いてくるのよりもタチが悪い。


ちょ、……あの、……水は、

…いらないわ、
……だから、


あんまりノーマルとは言えない悪戯の後は、私以外のモノで高められきった加賀さんをひたすらに甘やかしてやさしくやさしく可愛がるなんていうますます倒錯した真似をいつもはしているのだけれど。
もちろんこんな、お互い座位でも無いし加賀さんが縛られてることも無いし、まるで蜜月みたいに、糖度しかないラウンドに、なるはずだったしするつもりだった私をとどめた加賀さんは、私の愛撫が少しキツくなると声を漏らすけれど、それ以外ではかたくなに私を感じようとはしない。


…っさい、しょに、……言っておいてくださいよ、

……いや、よ、
…たまに、は、…ん、……いでしょう?

……もー、


私の部屋に持ち込む玩具も、放置してるふりも、黒くて幅広の拘束具も。
最初は、たまにはいいでしょという台詞から始まったものじゃありませんでしたっけ。
本当に嫌なら拒絶するし、別に呆れて無いけど、嬉しいけど。幸せと言い切るには戸惑いが先に来るのは、私が未熟だからなんだろうか。他の人にはとても見せられない顔は、加賀さんに見せるのも恥ずかしいのに加賀さんはしっかりと覗き込んでくるのだから悔しい。
強引なおねだりについに屈して差し入れた二本目の指に、加賀さんは喉を鳴らして喜んだ。



















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