糖蜜の粘度(赤城×翔鶴)





最初は半分が悪戯心で、もう半分は小さな妬心だった。
翔鶴だって半分は悪戯心、そしてもう半分は意地だったのだろう。
お互いに内心ではくすくすと笑いながら、相手のしようもなさに甘い窘めの声までを吐きながら、ゆっくりと、タイミングを図っていくだけの戯れ、そのはずだったのにどちらも自分から折れることを考えてなんかいやしないのだと、一番最初に気づいておけばよかったのに。

だんだん苦しそうな吐息になっていく翔鶴も、してる側のはずなのに彼女より酸欠に陥っている様を晒す私も。
布団のむこう、布越しに、さわっているのはたしかだけれど、暗闇よりはわかりやすいとすらおもうけれど、閨事と呼ぶにはとても、何かが足りない気がする、触れ合い。
しょうかく。ささやいてみたら迷いなく伸ばされた手がわたしを捉えた。
目を瞑っているのにまっすぐに、そのまま身体を引き寄せられて深い口吻。
べろりと舐められていくのがわたしの口内の方であることが納得いかなくて、口の中でも指先や脚ででも反撃をしてみたりしたけれど、知らぬふりの彼女はわたしにふふふと笑い声すら吹き込んで、きて。

……ずるいわ、

そちらこそ。

……ごめんなさい。

こちら、こそ?

ぷっ、……ふふ、

…ふふ、……おかえりなさい


ええ、ただいま。
そして、おやすみかしら?
彼女の掌で捉えられたままで笑えば、ちらり覗いた驚きの表情は、意地悪な顔の影にあっという間に隠れてしまって。


撤回しますよ?

それは困るわね


促せば素直に協力してくれる、お互いの服を脱がせあってゆく作業は殊更、作ったみたいにいつもどおり。


……あら、

………もう、


赤城さんのせいですから。
そういってそっぽを向く彼女に、ようやく恥じらいが見えたから漏れた満足の吐息に彼女はぴくり、反応して向き直られる不満顔。
いいじゃない、嬉しいわよ? 遅くなって帰ってきたわたしをちゃんと待ってくれていて、ちゃんと、期待してくれていて。
睦み合う時にしかつけない下着の結び目を引っ張れば妨害するかのような口付けが、もう一度。
今度こそ翔鶴の方に入りたくて、気を取られた隙をつかれてはらりと私の最後の一枚の方を先に落とされて、反撃を的確に成功させた彼女が愉しげに笑うのが、間近よりももっと近距離で伝えられた。


















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