ずいかくさんとのはなし(葛城×瑞鶴)





ずいかくさんがわらうから、ずいかくさんがあたたかいから。
わたしはきょうもすこしだけないてしまう。
とおくでこだまするこえはわたしのもので、わたしがおもってもないことばかりをさけんでいる。
やめて、やめて、……だって、くるしい。
あなたがわらうのをみているのは。
どうして、ずいかくさんは、わたしがせんぱいとよぶのをゆるしてくれないのでしょう。
こうはいだなんて、みとめてくれてないのかしら。
そうきめつけてしまうには、こうやってわたしとすはだでふれあっているじじつが、わたしのたんらくてきなしこうにまったをかけます。
ずいかくさんはそんなりんりかんのひくいひとではない。
わたしのこくはくにうんとうなづいて、きすしようとしたらみをかがめてくれて、よいくちにおとなったら、てれたようなかおで、しょうじを、あけてくれて。
そうしてこうなった、あのひだって、ずいかくさんはたくさん、たくさんわらっていた。
すきです、あいしてます、にかえるいらえは、はいかうんか、ありがとう、か。
そうしてつみかさなった、たくさんのことばで、ずいかくさんのへやとふとんはすっかりうまってしまった、きがします。
もう、ひとつだって、わたしがよけいにつめこむことなんか、できやしないというくらいに。

んん、と、うなったずいかくさんにはっとして、みをよせる。
ひとつのふとんでちかづいて、てやあしや、ほかのところがかさなりあって。それにくちびるがはいっていることはとてもおおいけれど、ふくをぬがないこともおおくって、えっちなふれあいになることはおおめにみつもってよんかいにいっかいくらい。
なつのあせも、ふゆのぬくもりも。はるのねむけも、あきのすきまかぜも。ずいかくさんと、ずいかくさんのふとんのうえで、ぜんぶぜんぶしっているのに、わたしはずいかくさんとのことがちっともわからない。
わからなくていいよって、あなたがわらうのをみているのはくやしい。
ありがとうといわれるときの、ずいかくさんのえがおをみるのはかなしい。
せんぱい。よふけにそっとささやいたら、ずいかくさんはわらってくれないし、わたしはないてしまうから。
そういいわけをして、こくりとのみこんだずいかくさんへのおもいは、きょうもわたしのむねに、なまりのようにおちていきます。
このへやよりずっとたくさん、すきもあいしてるもあいしてくださいも、はいってしまったむねのおくは。
こんなにまぢかにずいかくさんのぬくもりがあるというのに、いやになるくらいつめたい。
こうやってりょうあしをからめて、わたしのうででずいかくさんのどうをつかまえて。
ずいかくさんのこどうがきけるたいせいでねむりにおちてしまえば、ずいかくさんはあした、あきれたひとみで、わらってくれるのでしょう。
おくれないことばにかえってくるおもいなんて、もちろん、みせてくれることはないのですが。
やめて、やめて、……だから、せめて。このままで、いさせて。


















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