芋焼酎の水割り、ときどきロック(瑞鳳×三日月)








はい、たっち

…ぅえ?

あ、こっちこっち。
んー、やっぱりかわいいねえ、

……ずいほうさんだって、

うんうん。
そんなわたしがかわいいっていえるのがさぁ、

……もー、

だいすきなの。

……もう、

ん、……ふふっ、

きゃ……っ、

かわいい、みかづき。

……だまされませんよ、

やー、

だめですってば!!

なんで?


口付けは、ぜんぶの免罪符じゃないんですよ!!
お酒臭い瑞鳳さんに抱きすくめられながら叫べたら、もっと、大人になれたって言えるのかなあ。
ちょっと思ってみて、しばらく考えて、頭のなかのわたしが静かにおおきくバッテンをつけた。
ため息をつきながら瑞鳳さんの「次の一杯」を用意してあげる仕草をすれば、あたたかかったけれど素直には喜べない抱擁からやっと解放された。
間違っても手を出したりしないけど。
瑞鳳さんのグラスにぽちゃんと氷を入れたり、少しだけ大きなボトルのお酒を注いだり、そんなことまで、いつの間にか、覚えてしまった。


三日月ちゃんは、だめだよぅ

……わかってますから、

んっ、ありがと

……はい。

だぁいすき、

……失敗してたら、ごめんなさい

だぁいじょうぶ!



そういってくいっと飲み干してしまった瑞鳳さんに、頭のなかで頭を抱える。
次は絶対もっと薄く作る! と決意しながら、でもしばらくはまた懲りずに抱え込まれたこの腕のなかでこのあたたかさに浸っていてもいいかな、と思う。
どうせ、一緒に、本当に意味で一緒に。ばんしゃくができる日なんて来ないのだし。
これ以上おおきくなれないのは少しだけ淋しい。
改二になれば変わるかもしれない、と少しだけ期待する。
「解体」という名の退役を迎えてしまえば、もしかしたら、瑞鶴さんより大人になった姿で出迎えが出来るかも、なんて。
瑞鳳さんから離れることも、軍属から離れたまま戦争の行方を見届ける勇気も、所詮有りはしないのに夢を見てみたり、する。


……ずいほうさん、

なあに、


飲んでいいですよ、と、最初に言っておいたから今日の瑞鳳さんは随分とご機嫌だ。
わたしのくせっ毛をくるくると弄んではふふふと笑う、痕のつかない口付けをいっぱい落とされる、そうしているうちにいつの間にかグラスのお酒は空になっている、その繰り返し。
えっちな気分になるほどのふれあいでは無かったから、3杯目くらいからはきょうはぬいぐるみだとあきらめた。


好きですよ、

……うん、わたしも、


わたしから告げたときの返答は、いつも、二段階くらいトーンが下がる。
だから嫌いなのに、わたしの首元に顔をうずめた瑞鳳さんは、そんなことお構いなしにお酒臭い唇でわたしの肌をついばむのだ。
まるで、わたしなんか単なる酒の肴、そのひとつに過ぎないんだって表現してしまうにはあまりに真剣な気配がしなかったら、とっくに離れられていると思うのに。


……ずるいなあ……

うん、ごめんね、


子供の特権を精一杯使って、こうやってせめなじってるとき、瑞鳳さんの体温がひたひたとあがっていくのが気持ちいいと思ってしまうわたしの方が、もう、どうしようもなくダメになってしまった。







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