「かわいい。」






押し倒すというよりは、押しつぶしてしまいたかった。
でも、私の方がずっと強い腕力を、こんなところで誇示したいわけじゃないし。
なにより、加賀さんが、羞恥にまみれながら身体を開いてくところを見てる方が、ずっと興奮するのだ。
ね、加賀さん。って囁いたときは、肌を鮮やかな朱に染めてよがってたくせに、終わったあと、翌朝、般若もかくやといった表情で睨まれたのは、けっこー、不満だったりして。
(鍛錬や演習のときの私たちと同様、情事中のあれこれはそれだけ別世界として、完結すべきじゃないの?)
(……って、もともとは、加賀さんが言い出したんでしょーが!)
……まあ、でも、あの加賀さんが、戦闘や、褥の中以外でもあんな顔してくれたってのは、ちょっとばかり、嬉しかったりするんだから。
恋心は、結局、こんなにも単純なのだ。









かと言って、不満とか、要望とかが、消滅しちゃうことがないのも、根っこのところでは同じ感情から来てるから、困ったものである。
と、この私、瑞鶴は日々考える。


や、……っ、く、……ぅ、


…どうして唇、噛み締めちゃうのかなぁ。
こんなことでバケツなんてもちろん使えないし、リップクリームも軟膏も、あんまり役には立たないのは加賀さん自身の身をもって、とっくに実証済だ。
食堂なんかで目にする、着物の襟元から覗く赤い跡とか、濡れた袖口から透ける縄模様の痣とか、ああいうのとおんなじレベルでわかりやすい情事の痕跡を、あちこちにさらして回るのと変わんないって、気づいてないのかなあ。
んー、まあ、加賀さんがいいならわたしはいいんだけどさ。
どうせお風呂に入っちゃえばその辺もろもろ筒抜けなわけだし。


…ぃ、っ、……ま、


だけれど呼吸までしんどそうになってくるのはどうにも納得がいかなくて、
(わたしが触ったりキスしたりしたから乱れてるわけじゃないじゃん、それ、)
ぐっ、と押した指は襞と陰核は抉ったけれどまだ中には入らない。いりぐちも、さっきから、いやもっとずっと前から、だばだば溢れてて、ちょっと心配になるけど。
でもそれ以上に反省する。加賀さん、こーゆーのも、好きだったんだ。


ず、い、…かっ……、ぁ、あああ!

まだ、だめですよー


口にしただけで大きく震えた加賀さんの顔は見えないけれど、さっきの嬌声は、唇を噛んだままで出せるものじゃないから。
笑いかけると、(見えてないくせに、)肩がぶるりと震えた。噛みついて欲しいのかなー、そう思って顔を近づけてくと、加賀さんが余計、枕に額を押し付けたせいで荒い息がくっきりして、嬉しい気持ちになる。
左肩、優しく甘噛みして、離れると共に伝った唾液の糸が、途切れるのとほぼ同時に、左手を加賀さんの胸元に差し入れて、思いっきり、抓り上げた。


ぁっ!? 
……あ、ぅ、……んああ!


あげた声はむしろ愕然としたものだったのに、勢いよく反った身体が再び埋没してから、さっきまでより余程高まった声で喘ぎ出すのだから、やっぱり、こういう刺激も、結構イイ感じ、なんだろう。
こーゆーの。今まで、あんまりしてこなかったのは、たぶん、
……やっぱり、昼間の私たちを、どっかで引きずっていちゃったんだろうな。
反省しながら、両方の指、全然違うところだけど全く同じようにくりくり弄ってあげたらもうはっきりと蕩けた嬌声があとからあとから溢れた。

なんだろ。腕力で屈服させたいわけじゃないけど。しどけなく開いた足を押さえつけて、前に回した腕を抜いて、一点集中で吹っ飛びそうなくらいに一番弱いとこ、責め立てながら、
こっちを見てくれない顔を強引に振り向かせて、今の加賀さんに、すっごい、ちゅーしたくなった。







--------------------------------------------------------------------------------------

タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。









inserted by FC2 system