NTRワールド全開なこれと同一軸なので、そういうのがダメな方はリターンでお願いします。






夜に抱かれながら(飛龍×赤城)






今日は、特段誰とも約束をしていなかったから、別にいいのだけれど。
施錠できない部屋で、こんな真似をして。
同室の蒼龍が帰ってきたらどうするつもりなのだろうか。
……結局のところ。わたしが心配するのは、それくらいでしかなくて、
おそらくはそれが気に入らないのだろう飛龍は、わたしに向かっていまにも噛み付かんとせん表情と体勢をしているというのに、いまだ、わたしに口づけのひとつもしてこない。


ねえ、わたし、あなたを尊敬しているんです

ええ。


知ってるわ?
そう応えてしまうこと、それに彼女がひどく気をよくした笑みを浮かべること。
どちらも少しばかりおかしいのかもしれないけれど、それを指摘するような無粋者はこの場にはいないのだった。
(ああ、そうか。飛龍のことだから蒼龍にはすでに言っておいてあるのかしら。……どう誤魔化したのかは多少気になるところではあるけれど、そうであるならば柄でも無い気遣いを切り捨ててしまってもあとで面倒なことにはならないだろう。
 それに飛龍は、そういうことにはよく気のつく子だ。時に気を回しすぎる加賀さんや翔鶴に比べ、的確に、適度に、というのをよくわかっている。)


あなたのそういうところがすきなんですよ

そう。

わたしのすきなところを持ったままの赤城さんでいてくれれば、
……あとのところはどうでもいいんです。


わたしは、加賀さんでも、翔鶴でもありませんから。
届ける相手が間近にあればあるほど、歌うように話すのはこの子の癖で、けれどそれがわたしに向けられるというのはとても珍しくて。
わたしたちにとっての当たり前に忍び込んだ隙間は、そのまま裂傷となって目の前の彼女を苛む――ように見えた。
横目でみる分にはわたしよりいくばくか大きいようである彼女の手は、柱に強く押し当てられて彼女の支えとなり、わたしを縫い止める楔(くさび)となる。


――でも。


あいつに身体をゆるしたのは、ゆるせません。
いつでも抜け出せるから、土壁に身を預けたままのわたしにささやくのは、手管も企みも内包してはいなくて。
こんな睦言はずいぶんと新鮮で、思わず頬がゆるむ。予想に違わずむっとした表情を浮かべた飛龍は――ああ、それだって彼女がする顔としては、とても珍しい――わたしの襟を掴んでいた左手に、幾分かの力を余分に加えた、ようだった。


日が暮れてからの接触なんて、ぜんぶ遊びよ


いくら弓を引き絞ったところで、艦載機が飛ばせるわけじゃなし。
昼には見せない顔を見せてくれる子たちは、面白いとまでは言わずとも手持無沙汰の退屈を紛らせてくれるし。
駆け引きは面倒なことも多いけれど、日中にまで引きずるようなのはそもそも相手にしないし、
あとは、そうね。適度に体力を使えば、よく眠れる。


それ、翔鶴にも言えるんですか

言ったことはないと思うけれど。
言って欲しい?

はいと答えたら、いますぐ行きそうな顔してますね……

もちろん?

わたしから逃げるつもりですか?

わたしを捕まえたつもりだったの?


翔鶴の尊敬と献身は、それを受けるのは、とても気分が良い。
目の前のこの子とは全くもってちがうかたち。
加賀さんのあれは空気に近いから、無くなれば不便な思いをするのかもしれないけれど。わたしにとっては、あってよろこびを感じたりする種のものでは無い――から、おそらく加賀さんは瑞鶴と付き合うことを決めたのだろう。
……あ、もしかして、そっちのことも怒ってる?


かがさんのことは、

どうでもいいです。


即座に切り捨てられてしまっては、……だって、吹き出しちゃうじゃない。


…話をそらさないでください。

おはなしがしたいのなら、いくらでも付き合うけれど。


それであなたは満足なの?
言い放ってあげれば、ぐぅっと押さえ込まれた唸り声。
どうせこれからわたしに手を出すのでしょうに、……まあ物理的な意味でならもうとっくに手は出されているのだけれど、それだって口に出してしまえば怒られそうだ。茶化さないでくださいとか。
彼女に言われるのはなかなかの迫力で、説得力があるのが困る。


……少なくとも龍驤よりは満足させてあげますよ。

そう。


でもあなた、蒼龍相手には抱かれる側の方が多かったんじゃない?
それにあんなに愉快だった――あれほど必死な表情を超えることなんて、中々難易度が高い気がするけれど。
どちらの軽口も口に出す前に、今度こそ。
力強く唇を奪ってくれたことは及第点。
さて、この体勢を崩す方がはやいか、わたしの着衣を落とす方が先か。
あなたとの、……初体験なんて言ったらさすがに怒髪天をつきなおしてしまうかしら、でも。
これを、これからを、それなりに楽しみにはしてるのよ?
ぎしりと軋んだ柱と口元を間近にして、ばさりと音を立てながら。相手の居ない賭けは同時進行で予想より数段荒々しく進んでいく。
翔鶴が不在な夜は、適当な相手を捕まえられなかった夜はどうせ暇だから、彼女の激昂はむしろ好都合とさえ言えたけれど。
彼女はきっとそうは思ってはくれないのだろうなと考えると、わたしにも一応はあるらしいなけなしの良心がちりりと痛んだ。
……ような、気がしたのを一瞬に留めてくれたのだから、やっぱり、飛龍はよく気のつくいい子だ。





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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。









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