勝率は概ね3割弱(瑞加賀)





嫌だと言われたところで、やめられるはずも無かった。
睨めつけられる視線が苛烈であればあるほど、背を走る怖気と共に快楽がいや増していく。わずかだけ混ざるからこそ引き締まるのだと、私の高く結わえた髪に一筋混ざる橙を、この人はいつだか手放しで褒めてくれたっけ。良いものは良いといい嫌いなものには押し黙り不要なものは黙殺する、それが加賀さんという人であるからして。嫌だとわざわざ口に出してくるのは、さて、どんな意味を持たせてくれているのでしょう。


ふ、ぁ、……っ、


噛み潰しきらない声が耳朶を打つ。轟沈必至の蕩けたこの声も、その気になれば加賀さんは抑えきってしまえるはず。知ってますもん、そう長くは無いけどいい加減短くもない付き合いで、幾度肌を重ねたと思ってるんですか。
ぴんと立った尾をひとつ、捕まえてしごき上げたら先輩は息を詰まらせて啼いた。へにゃりとしてるのじゃなくて、健気に立ってるものが気持ちよくなりたくて待っているっていう証。微かに震えてくれてたら満点だ。加賀さん抱え込んだままじゃそこまで判別はつかなかったけど、背が沿ったところで背中の方に指をなぞらせる形で離したら呆然に近い吐息で惜しまれたから参った。駄目ですよ、そこだけで逝っちゃうと後が大変でしょう? 
今日みたいな日は、特に。


かがさん、かがさん、


インナーを剥がれむき出しとなった首まで至った指を、出来るだけ厭らしくなるように動かしてゆく。声を出すのにあまり動いてしまうと危ないし、何より私のいつもの手管から離れてしまうと気づいている加賀さんがぐぅっと唸り声をあげながら動きを止めた、その空隙を縫って。


ひ……っ!


一番立ってる尾を大雑把に捉えて絞り上げたら、背に思い切り爪が刺さって加賀さんがはじけた。私の膝を挟んでいる股座からどろりと熱いものが生々しく溢れてくる。


こ、……のっ、

ふは、……かがさん、


もう一周と言わんばかりに背中をなぞり上げ首元を擽ってから頬を捉えて口づける。首だけじゃなくて腹筋まで使って屈まないといけないから結構辛いけど、まだ息すら整わない余裕のない加賀さんに気を遣わせるわけにもいかないから、なんて言い訳をしないと自分から舌を入れる勇気すら持てない私を加賀さんは、忙しなく酸素を吸い込んでなくてはならないはずの鼻で笑った。……ほんと、器用なんだから。


まだ、いやですか?


ここから先は、絶対に口には出したくない加賀さんとどうしても言葉で聞きたい私の、我慢比べだ。









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