あげられないくせに(瑞鶴×加賀)





指揮官とのケッコンが羨ましいわけじゃない。
だって、まずもってなんだかめんどくさそうだ。加賀さんとその周囲の様子を見るに、予想が確信に変わってきたからますますしたくなくなった。そんなものなくても指揮官とは仲良しだし、加賀さんが指揮官とケッコンしててもわたしは加賀さんと恋人だ、と、思う。たぶん。


……たぶん、なあ。

きれいとは思いますけどねえ。

指輪が欲しければくれてやるぞ

……いいですもん。まがい物になっちゃいますから

拗ねるな。首輪ならどうだ?

どーせ夜だけでしょ。嬉しくないですー

鶴なら足輪の方がよいか?

もー、すぐそうやって、からか、
……もう。

かわいいからな。

……足なら、いいかも。

ほう?

……ミサンガとか、

ふっ、……ははは!

あー、もう、そういうところですよ!

女学生か。

駄目ですか。

いいや?


まさか、と、また繰り返される、音の鳴る口づけ。性懲りもなく、って言ってあげたいけど、加賀さんに抱き寄せられているというのは中々にレアだから、手放したくない。……こういう気持ちなのかな。指輪とか、贈るのって。


あまり気に病むなよ

病んでません。

不可逆のものに縛られ過ぎるな


お前は、と、告げる瞳がばかみたいに真剣だから。そういう顔するから、柄にもなく、何か欲しくなったり、しちゃうんじゃないですか。











あら、何編んでるの?

……手慰みだ

器用ねえ


ぴくりと震えたのは頭上の耳と頬の端。誰かに見せるつもりなどきっと無かったのだろう、やや不貞腐れたような返答が大層可愛らしい。手元にある大変愛らしい、御飯事のような飾りを持て余しているようにすらみえる相棒はそれでも一応は、一度はわたしの方を向いて言の葉を紡ぐのだから、猶の事だ。


組紐にしたら如何?

……そうですね、それもよいかと。


あ、何か隠し事された。うーん、これはあの子のおねだり、かしら。
加賀が良いように楽しんでいるだけかと思いきや、たまにこうして思いがけない場面に遭遇できるのだから、侮れない。まあこれだってわが妹の良いようにしている、ことには変わりないのでしょうけれど。


リリアンだったかしら

違います。


いいのよ別に手は止めなくても。待っていても正解を教えてくれる気はなさそうだし、忘れ物――ということにした――小銭入れをつまんだら退散するわ。


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