silly girls(ミアプリ)







一瞬の逢瀬に毒を籠める。
きょうのお題は王国お土産屋の進退。から始まった、王国ゲームブックの内容。
私の所属する以前に起きた、ひとつの戦争の話。


ふうん、
あなたも馬鹿なことをしたわね。

……ええ。

強みを生かさないでヤケになるなんて、ほんと、

はいはい、……ん?

腕っぷし頼りの馬鹿達に表立って戦争しかけるとか、あなたらしくないわ。

……でしたら、その、「わたしらしさ」はその敗戦で得たものですね


にこりと笑うときは、他者向けに誤魔化したいとき。
けれど時々、こんな風にふぅと微かに静かな笑みを覗かせるから――だからこちらも素直に甘やかすことができる。この子もそろそろ心身ともに大人になってしまった。
莫迦ね、大人だから素直さが必要になるのよ。お互いの了承の下にさらけ出すの。尤も――それをどう扱うかは当人達次第、私たちは随分歪な思いやりの仕方をしていると自覚はある。


それに。
わたしからしたら、最初にお会いしたときのミアさんも中々滑稽でしたよ

……そ。

生きる意味を必死になって探して。
ねえ、恩返しというだけなら、うちでも良かったのでは?

ばか言って。

妖精王国と言わずとも。シノブさんにでもよかったじゃないですか。
やっぱり、ヘルさんがいなかったからですか?


ここで応戦するとお互い本気になってしまうから、わざとらしく諸手をあげて白旗。
こくりとなったプリシラの喉は、安堵の証であるのに少しだけ劣情を催してしまった。危険な軽口を叩く前、ほんの少しだけ不安が浮かんでいた瞳に、先んじてぐらっと来てしまっていたのが良くない。……まったく。


……煽るのが上手になっちゃってまあ。

ふふっ、ありがとうございます。
ミアさんも上達されましたね。

はぁ、……もう、

褒めてますのに。

その笑顔でか。

本心ですよ?

そりゃ、そうでしょうとも。
いまから歪ませてあげましょうか?

まあ!


少しでも生々しい色事の気配を見せれば、一々狼狽えてくれていた頃の貴女も好きだった。
でも、私は、どちらかしか選べないなら――という状況での解を違える気はないのだ。失敗は、繰り返さない――それが私の今回の生を通す理由の一つだから。貴女の大切にしている一番と二番たちを、冒す気はないのと同じように許しはしないし、たぶん同じように向こうも然程興味を抱いていない。


じゃ、がんばってね。

はい。
そのうち乗っ取ってあげますから。

はいはい。でも私の目が黒いうちは王国お土産屋はうちのものよ。


多忙な貴女に、一筋の熱を。
どう使うかまでは私の知ったことではないけれど。嫌だったのなら変えてあげるし希望があれば考慮はしてあげる。貴女の気に入るようにしてあげるから、見返りは私の望むようにしかあげないという了解までが、心地よいから私たちはお互いを恋人という箱の中に入れている。愛してるわよ? この箱の中では一番。綺麗なラッピングでは無く、優先順位の最上位に位置付けるでもなく、ただ、雁字搦めの情を注いでは時々気まぐれを装った想いを贈り合う。少なくとも、どちらかの箱の中身がお互いだけでは無くなるまでは。





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