とくべつなこと(槙ゆか)




先輩の思考は、時々突飛な方向に流れていく。
本人は真剣なのはわかるし、だから私も真面目に捉えるし、でも一生懸命考えても理解の糸口が掴めない、ことが多い、ぽつりと落とされる抽象論。
絵の具を塗り伸ばしながら、塗り重ねながら、独り言の繰り言で、それなのに時折ゆかり、と呼ばれて。
はい、と返事をしたところで、上の空の応答が帰ってくるばかり。
どうしましたか、と聞けないのは、先輩の目が怖いくらいまっすぐ絵に向き合っているから。
私の存在は今の先輩の中から締め出されたのか、無意識の中にさえいると自惚れてもいいのか。
身勝手な寂しさと思い上がりの欲と。
ふたりきりの放課後はいつも私を持て余す。








--------------------------------------------------------------------------------------





ずっとあまやかしていて(槙ゆかⅡ)




どこまでしていい? と聞かれたから、何してもいいですよ、と答えた。
すとん、と非日常の幕が切って落とされるあの瞬間、心臓と一緒に音を立てる器官はどこなのか、私は未だにわからないでいる。
良くも悪くも容易く私の想像を越えていく先輩の欲求に、振り回されるのは恥ずかしい反面、応えられる自分が少しだけ誇らしい。
後で文句を言うことはあるけれど、それだって大抵は気恥かしさを誤魔化すためで、照れ隠しでもあり、強がりでもある。
どのみちしあわせです、と伝えることには変わりないのだから、素直になればいいのに、と思わなくもないけれど。
目を細めて笑う先輩の腕の中に収まる瞬間は、時を止めてしまうのすら惜しいから。







--------------------------------------------------------------------------------------

マリみて2作と抱き合わせでした。甘。










inserted by FC2 system