君といられる今がしあわせこれの続き)






……で、パスタねぇ。

来たかったから。


冷製パスタの細麺をくるくると巻きつけて。
柊ちゃんを見ないまま、殊更にお行儀よく、ひと口掬う。
あ、美味しい。


会いたかった、の間違いじゃねーの?

それもあるけど。
柊ちゃんと来たかったの。この店。


柊ちゃんの食べ方も、意外に、でも無いけどキレイなもので。
注文の仕方までが堂に入った様子、もっと見たいから私から頼むのは差し控えると、以前告げたら呆れ混じりの照れ笑いで了承された。
そういう、不意討ちの可愛さは、時に。いつも思い知らされている強さより格好良さより、卑怯で、狡い。


ふうん?
つーことは、

はじめてよ。悪い?



それは勿論、こういう嫉妬混じりの軽口だって。
目を眇めた柊ちゃん、(呆気にとられたり不貞腐れたり、してくれないところが好きで、嫌い。)こっそり固唾を飲んでる私に気づいてるくせに、結局何も言わないままで真緑の皿から、またひと口。


悪かねーけど。
こんなんで、良かったの?


もう、嫌みたらしいくらいゆっくりと。ジェノヴァソースを堪能して、上に乗ったベーコンまでを齧ってから。ようやく私のために口をあけた柊ちゃんは。
私の方をまっすぐに見て、心臓から何から撃ち抜いてしまう真剣な顔つきで、私に。


…興味を覚えた店に、こうやって気負わずに来てみるの。
あこがれだったの。


半分は嘘、ちっぽけな強がり。
あこがれであることすら知らなかった、気負うも何も無く、昨日はただ楽しみで布団の上をごろごろ転がった、私を前にして柊ちゃんが笑う。


そりゃ良かった

……ん。


半分は口実で、そして全身全霊で、幸せだって言える。
せっかく奢ってもらったランチの味も半分は飛んでしまって、悔しいし柊ちゃんのそれも美味しそうだからまた今度一緒に来ても良い、なんて。
聞けもしないのが新鮮で気恥ずかしくて、誤魔化すように煽ったのが何ジュースだったのかも、実はあまり覚えていない。
バラしたら絶対に面白がって喜ばれて、そして散々からかわれるから。また来たい、以外の感情は本人には秘密だ。




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タイトルはふたりへのお題ったーよりお借りしました。










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